第三十九話 血酒陳橋駅
好漢たちが梁山を後にする日が遂にやってきた。だが、泊軍は東京に入場できず、陳橋で止められる。陳橋で恩賜の酒肉をピン撥ね、バカにされたことから阮小七の副将は義憤を燃やし、この管理を斬った末、自分の罪を認め自刎する。小七は亡骸にすがって慟哭した。

朝廷に帰順したことから、遂に梁山泊を後にする日がやってきた。晁蓋の位牌の前に額づき、別れの挨拶を告げる好漢たち。祭り文を読み終わった朱武が、感慨深げに晁蓋に別れを告げると、阮小七はいたたまれなくなって忠義堂を飛び出した。
呉用と阮三兄弟は晁蓋の墓前で紙銭を燃やし、供養する。阮小七は晁蓋に向かって
「兄貴、俺達ついに梁山を下りることになったよ。だけど俺・・・、やりきれない」
と、心の裡を絞り出し、泣き崩れた。
晁蓋の墓の隣りにある林冲の塚の前に立ち尽くした魯智深は、阮家兄弟の涙声を聞きながら、恩賜の金牌を投げ捨てた。

すっかり慣れ親しんだ梁山泊からの引越しは大掛かりなもの。楊志は嬉々として引越しの監督にあたる。櫃を抱えた王英は扈三娘を探すが、三妹と呼んでいるのを花英に聞かれ、揶揄れる。櫃の中身は衣類なのだが、扈三娘はそんなものはもう要らないと冷たい返事。王英は中に入っていた扈三娘の下着を一枚抜き出してこっそり懐に入れた。
扈三娘と違い、家財道具から什器までごっそり持っていこうとするのは顧大嫂と孫二娘の二人。この差はやっぱり主婦歴が長いからか? 李逵は隣りで燕青がきりきり働くのを横目で見ながらマイペースで酒を煽っている。てんやわんやの引越し荷物も何とかまとまり、後は出発の号令が下るのを待つだけ。誰ももう立ち入ることのない忠義堂を感慨深げに見回した後、呉用は戸に閂をかけた。

官軍となった泊軍に官服が支給された。呼延灼と楊志は嬉しそう。李逵は服をあべこべに着て燕青の失笑を買うが、官服なんか着たくないと怒り気味。阮家三雄は魯智深と武松が着ないから自分達も着たくないと駄々をこねるが、彼らは出家人だからと呉用に諭され不満顔。王英は扈三娘の着替えを手伝おうとするが、自分でやるからと拒否される。ここでもまた『娘子』と呼んでいることを張青夫妻に聞きとがめられ、「もういいかげんに『夫人』と呼びな」と張清から言われた王英は、嬉しそうに扈三娘に一揖するのだった。
姦臣の策略によって、東京の北、陳橋駅に留め置かれた泊軍は朝廷の許可がない限り京師に入ることも禁止された。使者となったのが例の李虞侯。横柄な口調と犯罪者のような扱いに怒りに燃えるいつもの一同。梁山に帰りたいと言い出す彼らを宥めながら、呉用は自身やるかたない様子。

ある日、宋江は江南征伐を言い渡され、勲上げられると同時に、兄弟たちの欲求不満も解消できると考えるが、呉用は蔡京、高イ求の悪巧みに気付き渋顔を見せるが、宣旨が下されればそれに従うより他はない。一同は南下し、江南の方臘討伐に向かうことに。

討伐に先立って恩賜の品として酒肉が兵卒まで下された。しかし、例の李虞候はピン撥ねをし、兵卒の怒りを一身に受ける。阮小七の副将、何成は皆を代表して李虞侯に詰め寄るが、彼は知らん顔。あろうことか斬ってみろと何成を逆に挑発する始末。傲慢で傍若無人な李虞候の態度に怒りを覚えた何成は、李虞侯を本当に斬り捨てる。この知らせに驚き慌てる宋江。しかし何成は逆に落ち着いたもの。宋江の前で一杯の酒を煽ると、官軍となった今ではこの罪は死をもって償うのみ、と言い自刎した。何成、李虞侯を斬ると知らせを受けた阮小七らが現場に駆けつけたが、時すでに遅し。そこには自分の副将の亡骸と、地面に平伏する宋江がいるだけだった。机上の恩賜の酒肉を投げ捨て、阮家三雄は何成の遺体をそこに安置する。阮小七は遺体に縋って号泣した。












この「小卒を斬る」は小説でも衝撃的なシーンだけど、
こんなにクローズアップされるとは思わなかった。
上手い演出でした。
彼はこの前に梁山泊に来た李虞侯を、小七と一緒にからかった人だそうです。
(七ちゃんが舵取りで彼が漕ぎ手頭)
平伏していた宋江の頭を蹴っ飛ばさなかっただけ、七ちゃん冷静だったな。

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