第四十三話 宋江之死
生き残った好漢たちは恩賞を受け、それぞれ官途に就くこととなったが、阮小七は蠎袍を着たことが仇となりそれに浴せず、平民となって石碣村に帰ることに。しかし、官途を辞したのは柴進、戴宗も同じだった。花栄も官職を辞し、宋江に随身する。だが、彼らを恐れる姦臣の罠に落ちた盧俊義は淹死。また宋江、花栄も同じように毒酒の計に落ちる。宋江は李逵を呼び寄せ死出の伴とする。梁山泊で三人を弔ったあと、呉用は一人忠義堂で練絹を手にした。
燕青、李師師と駆落ち!
いいのかお前そんな年増で〜υυ
東京に凱旋した泊軍は皇帝の前に目通りする事となったが、ここに来て燕青の姿だ見えない。燕青もまた恩賜を願い出ず、去っていったのだ。燕青は御香楼で李師師に無事帰還の挨拶をしに行く。李師師は涙を浮かべて喜ぶ。そんな所に外で騒ぐ声が聞こえてきた。燕青と李師師が窓から覗いてみると、ちょうど市斬に処される方臘の檻車が牽いていかれるところだった。李師師が気がつくと燕青の姿がない。通りに目をやると、人ごみに紛れて燕青が小さくなっていくのが見えた。
燕青は舟で都落ちしようとしていた。そこに一艘の舟が水面を滑って来、燕青の舟に横付けした。舟に乗っていたのはなんと、燕青の後を追ってきた李師師。驚いた燕青は、連れていけないと李師師に言うが、皇帝の情婦と駆落ちするのがこわい? と言われ、燕青はようやく笑顔を見せる。燕青は例の御赦免状を手に、「これがあるから大丈夫」と笑うが、李師師にそんなもの何の役にもたたないと言われ、納得した燕青は、御赦免状を細かく破り捨てた。二人を乗せた小舟はいずこともなく滑っていった。


小二と小五の骨壷を抱き、故郷の石碣村に戻る阮小七を宋江らは見送りに来る。「自分は端から役人になる気はなかったんだから、気を落さないでくれ」と宋江に言う阮小七.。宋江への慰めではなく、これは本心であろう。「俺は石碣村で気ままな漁師に戻るが、機会があったら村に着て、俺の取った魚を食べてくれ。」と阮小七は宋江らに向かって言う。阮小七が旅立とうとする所に、「待ってくれ!」と叫ぶ声がする。一同が振り返ってみると、柴進、戴宗、朱武の三人だった。三人とも官途につくのを厭い辞退したという。柴進は故郷の滄州に戻り、戴宗と朱武は公孫勝の所に赴き、出家すると言い宋江に暇乞いをする。
「我等108人が梁山泊にいた頃はあんなに賑やかだった。それが功成り名を挙げた今となって、残った兄弟たちも散り散りになっていく。私はやはり間違っていたのだろうか?」と皆に問う宋江。呉用はこれも天命だと宋江を諭し、彼らの旅路は長いから早く旅立たせてあげましょうと促す。「離れていても兄弟は兄弟ですよ。」「生きていればまたいつか会える日が必ず来ますから」と口々に言い、別れを乞うた四人はそれぞれの道に向かっていった。宋江はその姿をじっと見送っていた。
義兄弟たちは官途に就き、それぞれの任地へと散っていく。宋江も同様だ。しかし、蘇州へ赴任する前に宋大公の四十九日法要をとり行うためにうん城に一旦戻ることにしていた。その前日、宋江、呉用、李逵と花栄は晩餐をともにした。宋江は、「花栄はまったく心配する事はない。しかし、李逵は赴任してからも心配だ。何が起きても耐え忍ぶように、わかったな。呉用先生もお大事に。」と言うが、この一番心配のないはずの花栄がある計画を実行する。
出発の日、東京城を後にした宋江の前に花栄が現れた。花栄は官印をすでに返上してしまい、無位無官のまま宋江に従って行くと言う。宋江はもちろん大反対するが、花栄は呉用の許可も取ってあるし、その方が他の兄弟も安心する。それに自分はもう何も煩わされない身の上だからといい、宋江と従者を急かしてさっさと先頭にたち、馬首を進める。宋江はようやく愁眉を開いた。
宋大公が亡くなって四十九日、宋江が法要を行なっていると、呉用と李逵が任地から馳せ参じた。久しぶりに四人は楽しげに机を囲む。李逵は花栄に「役人になっても全然つまらない。ねえ〜、花知塞、替わってくれよう」と言い、花栄の拒絶にあって一同は笑いあう。
盧俊義は盧州の任地から突如朝廷の召還を受け、東京に馳せ参じたが、これは姦臣どもの罠だった。食べ物の中に一服毒薬を盛られた盧俊義は、盧州に船で戻る途中、毒が身体に回り、運河に落ちてしまう。盧俊義が再び浮かんでくる事はなかった。
ある日蘇州に使者が走り、宋江に恩師の酒をもたらした。宋江が杯を受けようとすると、横から花栄が出てきてその杯を取り上げ、それを飲み干した。一瞬使者の顔から血の気が引いたが、「無礼者」と花栄を一喝。花栄は澄ましたもの。毒見をしたから大丈夫ですと宋江に一揖した。
後日、宋江と花栄は御酒に慢薬が仕込んであったことに気付く。宋江は花栄に向かい、「後悔していないか?」と訊ねるが、花栄は首を横に振り、「自分はこのために付いて来たというのに、大兄の命が救えなかった事が心残り・・・」と答える。
宋江は「朝廷が私を害するわけがない。←あんたまだ目が覚めんのかい・・・υυ だが、われら、死ぬ時もまた生きていた時のように清廉に後悔もせず、死んでいこう・・・」と、花栄に向かって語りかける。
「ただ、心残りは・・・」宋江は最後の恐るべきたくらみを花栄に打ち明けた。

李逵は宋江の呼び出しに、潤州から飛んできた。宋江は例の御酒の残りを杯に注ぎ、これが朝廷の下賜された毒酒だと李逵に告げる。李逵は「兄貴は俺に死んで欲しいんだろ?」とずばり言ってのける。「兄貴は俺が無茶をやらかすか心配なんだろ? 大丈夫、安心しな。兄貴がいないこの世なんて何も面白くない。」と言って李逵は毒酒を飲み干した。李逵は酒壺にも手を伸ばし、残りの毒酒を一滴残らず飲み干してしまう。
「鉄牛は全部飲んだから早く死ぬだろう。だから何の心配も要らないぜ兄貴。」 ・・・・・・・(泣泣泣)
室内は綺麗に片付いていた。李逵は最後にカーテンを閉め、寝室の扉を閉じると、宋江の寝台の脇にうずくまった。衣桁には宋江の官服と冠がきれいに掛けられていた。花栄は宋江の枕元で柱に寄りかかっていたが、どうやらもうこと切れている様子だった。
「兄貴、俺は死んでも兄貴に付いていくぜ。鬼卒になってもな。」
李逵は宋江に向かって話しかけたが、宋江は横たわっているだけで、何も返事をしなかった。李逵も口を閉じ、身を丸くして目を閉じた。

宋江の身代わりに毒酒を飲んだ花栄。
でも宋江は自分もそれを飲み、李逵にも告げて飲ませる。

それでもそれでも君たちは、宋江のこと大好きなんだね。
だってなんだか幸せそうなんだものこの人たち・・・
「宋兄貴と一緒なら、こういう死に方も悪くないぜ・・・」

ぎしぎしとゆっくり坂を登っていく牛車の上に呉用がいた。三つの骨壺を抱き、うつろな目をした呉用は十も二十も老け込んだかのように見えた。行く先は懐しの梁山泊。往時、隆盛を極めたあの梁山泊も、今は誰も住む人もない廃墟のなっていた。呉用は晁蓋の墓の前に新たに三つの塚を作り、紙銭を焚いて三人の霊を祭った。

あんなに違った三人なのに、骨になったらみんな同じような壺に入って、きっとそのうち、どれが誰の墓だったのか分らなくなるね・・・・・・
呉用はすっかり老け込んでいて髪も真っ白、一瞬宋大公でも生きていたのかと思ってしまった。
みんな死んでしまって、一人ぼっちで・・・
呉用の死は幸せそうじゃない。寂れ果てた埃だらけの忠義堂で縊れた呉用は、ただただ寂しくて寒そうだった。
もう、ここには誰もいない。

呉用は招安を受け、京師に上がる際、自分の手で封印した忠義堂の扉を再び開いた。
しかしそこは皆が集ったあの忠義堂と同じ場所なのに、まったく違う場所のように蜘蛛の巣だらけで荒れ果てていた。好漢たちが飲み、唄い、笑いあった梁山泊。あの楽しかった日は再び戻ってこない。時は流れ、再び戻ることがないのは分っているのに、漁歌や皆の笑い声が聞こえてきた。それは呉用の錯覚だっただろうか?
途端、がたんと椅子の倒れる音が堂内に響いた。
呉用が踏み台とした椅子を蹴り、梁に首を吊った音だった。
彼らの悲壮な末期のものがたりは皇帝の耳に届いたのであろうか・・・・・・?
朝廷には宿大臣が宋江の死を奏上する声が流れていた。



完

結局水滸伝は
滅びる物語なんだなー・・・

と、これ見てつくづく思いました。
滅びる側にとことん感情移入させて、
もう友達同然、兄弟同然、自分も同然と思えてきた所で一気に皆殺し・・・
だってあたし、みんなが(一兵卒も含めて)痛いおもいをして
殺されていくのを見てて痛かったよ自分υ
もう途中から「宋江が招安なんて言うからいけないんだ。こんなヤツぶっ殺して、皆で末永く愉快にやればいい!」とずっと思ってたけど、やっぱり本当はそんな事できるわけないね。
だってみんな、それでも宋江のこと大好きなんだから。
それって多分、私たちが水滸伝を好きな気持ちと同じ。
滅びるのを見るのがイヤなら、読まなきゃいい見なきゃいい。
でもそんな事できっこない、だって水滸伝大好きなんだもの。
ホント、悪い男どもにつかまったものです(笑)

でも、つかまったからには一生ついてくからねー!!(笑)

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