日本とブラジルがモザンビーク・サバンナを農地に変える 持続可能性への大いなる不安

農業情報研究所(WAPIC)

09.8.22

  ジャパン・タイムズ紙によると、日本とブラジルが、ブラジルのセラード開発の経験に基づき、モザンビークの乾燥サバンナを農地に変える共同事業に合意した。国際協力機構(JICA)の大島賢三副理事長は、実を結ぶまでには10年から20年かかる事業となるが、このジョイントベンチャーが、年々消費する60万トンの米の3分の2以上を輸入に頼るモザンビークの食料自給を可能にし、また貧困を軽減できると信じると語った。

 このために、日本はモザンビークに対し、金融支援とともに、途上国の農業開発支援で獲得した専門的知識(技術)を提供する。他方、ブラジル農業研究公社(EMBRAPA)は、モザンビークのサバンナを覆うと思われる(セラードと同様な)酸性土壌に適した大豆品種をつ創り出すことに責任を負うという。

 Japan, Brazil sow seeds of hope in Mozambique,Japan Times,8.22
 http://search.japantimes.co.jp/rss/nn20090822f2.html

 先に伝えたように、FAOと世界銀行の研究も、モザンビークのサバンナもその一部をなすギニアサバンナには、大量の未開発農業適地が存在し、商業的農業の大々的開発も可能であるとを認めている(アフリカ・ギニアサバンナの4億fに商業農業の機が熟す 大規模集約農業には要注意,09.6.26)。ただし、「公平な開発と社会的紛争の回避を目指すならば、ブラジルで起きたような富裕な農業者が主導する大規模農業よりも、タイで起きたような小規模土地保有者が主導する農業変革の方が望ましいモデルとなる」と釘を刺している。

 小規模な商業的農業が貧困から抜け出すに十分な収入を稼ぐためには、基礎食料作物生産者に多角化の機会も提供しなければならない、「集約化は、脆い生態系の破壊や肥料・農薬の過剰な使用を通して環境を損傷するリスクももたらす」から、ギニアサバンナの農業利用で農業集約化が起きるときには、環境影響を監視し、損傷を減らし、あるいは回避する措置を実行せねばならないとも述べている。

 つまり、小規模家族農業、多角化、環境を重視することで、社会的・経済的・環境的に持続可能な農業の開発を目指さねばならないということである。

 同時に、農業開発が遊牧民を締め出し、遊牧文化を消滅させるようなことがあってもならない。国連の定義による持続可能な農業・農村開発は、社会的・経済的・環境的のみならず、文化的にも持続可能でなければならない。

 多くの小農民を、ときに銃によってまで追い出し・大量の土地なし労働者を生み出すことで巨大規模のモノカルチャープランテーションを作り出してきたブラジルを共同のパートナーとして選んだことに、持続可能な開発をめぐる大いなる不安を感じないわけにはいかない。この不安は、政府が決めたばかりの「食料安全保障のための海外投資促進」にも付きまとう(日本政府 商社等の海外農地投資を後押し 新植民地主義の足音が聞こえる,09.8.21)。