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GMから有機まで、農業科学技術の役割検討で国際合意

ー今後50年の食糧需要をいかに満たすかー

農業情報研究所WAPIC)

03.8.6

 8月5日付の”Financial Times”紙が報じるところによると(注)、世界の農業における科学と技術の役割の最大規模の再検討が、米国政府、世銀、環境・開発NGOを含むグローバルな「連合」により合意された。先週、ブダペストで開かれた会合で合意されたもので、遺伝子組み換え(GM)から有機農業にいたるあらゆる技術の将来に役割が検討されることになる。これは昨年8月に世銀が首唱したものである。この再検討は、人口増加と土地と水の不足などがもたらす食糧問題の解決におけるバイオテクノロジーの役割のような論争の激しい問題にも取り組む。その結論は先進国・途上国の農業研究計画に決定的影響を及ぼす。それはバイテクテクノロジー産業の将来も大きく左右する。それだけに、モンサントやシンジェンタなどのバイテク企業と環境・開発NGOの間での微妙な合意が長続きするかどうか不安をかかえていた。今回の合意は、そのような不安を取りあえず払拭したことになる。

 この再検討の共同議長を務める世銀の主任研究者であり、国連気候変動国際パネルの前議長でもあったボブ・ワトソンは、「これは、農業の優先事項と研究課題の新生面を開くために地方的知識と国際的知識を融合させ、統合する真の機会だ」と語ったという。グリーンピースは、これは農業への新鮮で、真に新たなアプローチに向けた合意であり、「シンジェンタとグリーンピースがGMをめぐって立場を異にすることは誰もが知っているが、協力のための大きな余地がある」と言い、人道主義団体・Oxfamは、科学を世界の貧者に役立たせることにつながる可能性があると評価している。

 検討は来年早期にスタートし、2006年半ばに完了する。世銀、国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、世界保健機関(WHO)を含む政府間組織の傘下で運営されることになろう。このプロジェクトの費用は1,500万ドルで、先進国政府が大部分の資金を賄うことが期待されている。アナン国連事務総長と世銀理事会が経済開発協力機構(OECD)諸国政府に資金確保を働きかけることになりそうである。検討は、社会的・環境的に持続可能な方法で食糧生産をいかにして増加させるかという問題に焦点を当てることになろうという。

 注)Global alliance to review role of science in farming,Financial Times,02.8.5,p.4

 関連情報
 Global farms study aims for food security,Financial Times,02.7.30,p.2
 世銀:農業科学のリスクと機会を探る国際協議プロセスを始動,農業情報研究所(WAPIC),02.8.31
 
農業問題を助けるために科学に焦点,農業情報研究所(WAPIC),02.11