バッタの大群と闘う、ドイツ研究者が安価で環境に優しい方法を考案

農業情報研究所(WAPIC)

04.9.27

 砂漠バッタの大群が世界で最も貧しい人々が集まる西アフリカ諸国の食糧作物を食べ尽くしつつある。国際的支援を受けた各国と国連は、飛行機・ヘリコプターからの殺虫剤の散布による懸命な防除活動に努めているが、燃料・殺虫剤が不足し、航空機の維持も困難なことも手伝い、次々と世代交替を繰り返すバッタの繁殖の勢いは一向に衰える気配がない。つい先頃も、国連は、マリで100万dの穀物、国の全穀物生産の3分の1が破壊される恐れがあると発表したばかりだ。

 このような防除方法は非常な費用を要し、国連の再三の要請にもかかわらず、必要な支援は集まらない。手をこまねく僅かの間に、バッタは次々と新世代を生み出し、西アフリカ全体を覆い尽くすに至った。それだけではない。大量の殺虫剤散布は、環境を痛めつけ、懸命に働く農民自身の健康も脅かしている。これでは、バッタは死んでも人間もまともに暮らせなくなる。この状況のなか、ベルリンの技術大学地理学研究所の研究者たちが、電気を使ったより安全で、経済的費用も安くつく防除方法を考案したという(Non-chemical Insecticides Aid Farmers,de-world.de,9.26)。

 12ボルトのバッテリーで動くポータブル発電機から電力を供給される電気グリッドがバッタやその他の有害昆虫を脅して追い払う。バッテリーは太陽電池で常に充電されている。グリッドの中心部には畑の中を手で引っ張られる長さ4m、高さ0.5mのネットがあり、ワイヤーのネットに生み出される振動が昆虫を脅して追い払う。これに近づくものは衝撃で即死するという。

 ただし、昆虫をすべて殺すには高電圧が必要で、この装置は薬剤と併用する必要がある。しかし、コストは一回の装置購入費だけで済み、この装置を導入できる農民は、必要なときにいつでも利用できるから、地域の実情に最も適合する費用効率的な方法だという。現地では、とりわけ、まだ地面を這い回る幼虫の段階でバッタを殺すのに利用できることが示唆された。

 とはいえ、この方法には、草丈の高いところや樹木の間では十分に機能しない限界もあるという。この装置だけでは、成虫の大群と闘い、これを防除するには不十分だ。根絶には幼虫段階で殺すのが最善で、衛星観測、詳細な天候予測(砂漠バッタが大量に繁殖するには、一定の湿気が必要である)、地方的観測による繁殖地の早期発見が決定的に重要になる。研究者は、この方法をさらに有効にするために、ネットの中心にフェロモンなどの誘因物質を施用、幼虫をここに引きつけて殺す方法を研究しているという。

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