EU:自然豊かな農地の一層の保全が必要―欧州環境庁と国連環境計画が警告

農業情報研究所(WAPIC)

04.4.30

 欧州環境庁(EEA)と国連環境計画(UNEP)は29日、最も自然豊かな農地の減少防止に一層の努力がなされなければ、EUは2010年までに種の損失を停止させるという目標を達成できないだろうと警告する共同報告を発表した(⇒High nature value farmland: Characteristics, trends and policy challenge)。

 EUは2010年までに生物多様性の損失を停止すると宣言している。同様な目標は、昨年5月のウクライナ・キエフでのヨーロッパ全体の環境相の会議でも採択された。この目標を達成するためには、低集約農業で特徴づけられる高度な自然的価値をもつ農地が決定的な役割をもつことも認められている。昨年のヨーロッパ環境相会議は、このような農地を2006年までに確認することに合意した。また、2008年までに農村開発措置の大きな部分の転換によってこのような農地の経済的・生態的持続性を支持することも約束した。

 ところが、EEEとUNEPの報告は、このような農地が、一方では農業の集約化の進行、他方では農業の放棄という二つの対照的な動きによって厳しい圧力にされされていると警告、一層の政策的努力、特に条件不利地域や農業環境計画の農業補助金の地理的ターゲットの改善を要請したのである。

 報告によれば、主に東部・南部ヨーロッパと英国北部に分布する(EU外部ではデータが欠如)これらの農地で自然保護区域に属するのは3分の1以下で、保護は大部分、EU共通農業政策(CAP)の下での農村開発措置に依存している。関連措置の大部分は、丘陵地・山岳地域など条件不利地域農民を支援する支払いと、適正農業慣行を超える環境に優しい農業方法を助成する農業環境措置である。

 ところが、条件不利地域とこれらの農地がある地域は重なっているとはいえ、現実の条件不利地域支払いは、このような農地がどれほどあるかとはほとんど無関係に支払われれているという。また、農業環境計画の地理的絞込みも適切ではないようにみえる。このような農地のシェアが高い国、特に南部ヨーロッパの国の農業環境計画は相対的に弱体である。

 最近数十年のヨーロッパ農地の生物多様性の衰微は劇的であり、農業生産の大規模集約化がその主因と指摘されてきた。CAPはますま環境などの非貿易関心事項に重点を移行させてきた。昨年は、大部分の補助金のと生産の関連を断ち切り、直接支払いの条件として環境基準などの遵守などを課すクロス・コンプライアンスを強制化するともに、農村開発措置を強化する一大改革に合意したばかりだ。それにもかかわらず、報告はさらなる改革の緊急の必要性を浮き彫りにした。CAP、農村開発措置はますます厳しい試練にさらされることになる。

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農業情報研究所(WAPIC)

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