中国企業 米国並み巨大アグリビジネスを目指す 持続不能な道に突進!?

農業情報研究所

06.3.9

 中国に米国のスミスフィールド・フーズ、タイソン・フーズに比肩する巨大アグリビジネスが登場するかもしれない。サウス・モーニング・ポスト(香港)紙の報道として米国・soyatech.comが伝えるところによると、中国最大の動物飼料生産者であり、酪農・養鶏のメジャーである新希望集団が、今後5年間に50億元(約700億円)を投入して事業を拡張、農業資材供給チェーン管理や下流の食肉加工にも進出するという。

 フォーブスによると中国第6位の富豪である集団の劉永好会長が明らかにした。集団はスミスフィールドやタイソンと協同して統合された世界的に競争力のあるアグリビジネスを建設するための中国最初の企業となることを目指す。劉会長は、スミスフィールド、タイソンに比肩する中国企業となることを望んでいるという。

 China's Largest Feed Producer Aims to Double Sales in Five Years, Become 'Tyson' and 'Smithfield' of China,soyatech,3.8
 http://www.soyatech.com/bluebook/news/viewarticle.ldml?a=20060308-9

 新希望集団は、昨年の200億元の売り上げを5年間で500億元に増やすことを目指している。昨年は、供給チェーンの拡大を求めて、中国最大の鶏肉加工企業である山東省六和集団の株を購入した。最近、貴州政府及び地方金融機関と野菜・家禽生産で協同組合的農業供給チェーンを作る協定も結んだ。会長は、それが提供する農薬と栽培方法の利用により、農家は生産物の価格を10%から20%引き上げることが期待できると言う。

 集団は、牛乳収量を引き上げるための改良乳牛種導入のために、四川省と雲南省にも大枚を注ぎ込んでいる。このプロジェクトは、一部資金を世銀の民間部門投資の腕をなす国際金融協会(IFC)から提供されている。養豚部門では、20万頭の収容能力をもつ国最大の農場を建設するために、浙江省の一企業 と協同している。劉会長は、「我々は米国モデルを採用できるかどうか検討したい」と言う。

 会長は、同時に、集団が鶏の価格の50%の下落を引き起こした鳥インフルエンザの拡散で大きな課題を突きつけられていることも明らかにした。昨年後半以来、鳥インフルエンザにより蒙った損失は1億元はくだらない。「しかし、我々は契約義務を守り通し、供給を維持してきたから、競争者に対して市場シェアを伸ばしてきた」と言う。

 中国もまた”持続不能”な道を突き進んでいる ように見える。米国型の工業的畜産の拡散が、”農業三次元汚染”をさらに悪化させないことを祈るのみである(中国専門家 農地”三次元汚染”の穀物生産への悪影響に警告,05.12.12)。また、中国が鳥インフルエンザのみならず、狂牛病の巣窟にならないこと も。今日ヨーロッパからアフリカにまで広がってしまったH5N1鳥インフルエンザウィルスが中国南部起源のものであることは、中国政府の否認にもかかわらず、ほぼ確認されている(NewScientist.com,http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn8686)。また、中国 が英国から肉骨粉を輸入していたことも分かっている(イギリスの肉またはくず肉の粉・ミール・ペレットの輸出先と輸出量)。

 関連情報
 ワールドウォッチ報告 工場畜産の世界的拡散と環境・健康・コミュニティー破壊に警告,05.10.1
 鳥インフルエンザ危機の根源は工業養鶏、野鳥や庭先養鶏ではないーカナダNGOの新研究,06.2.27