鳥インフルエンザ危機の根源は工業養鶏、野鳥や庭先養鶏ではないーカナダNGOの新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.27

 世界的な鳥インフルエンザ危機の根源は大規模工業養鶏だ、小規模養鶏や野鳥ではないと主張する新たな研究が現れた。この研究は、カナダ・モントリオールに本拠を置く国際NGO・Grainが26日に発表した。それは、工業的養鶏と貿易ネットワークの拡散が致死的なH5N1鳥インフルエンザウィルスのようなウィルスの出現と伝播の理想的条件を作り出した、過密な養鶏工場内ではウィルスは急速に致死的なものになり、増殖すると言う。

 Fowl play: The poultry industry's central role in the bird flu crisis
  http://www.grain.org/briefings/?id=194
  Press release:http://www.grain.org/nfg/?id=372

 この報告によれば、感染農場からのウィルスがぎっしり詰まった空気が何キロメートルも運ばれる一方、貿易ネットワークは生きた鳥、雛、肉、羽、卵、家禽の糞、飼料など様々な運び屋を通じて病気を拡散させる。誰もが野鳥や庭先養鶏こそ問題の焦点と言うが、これは、人々による遺伝資源の管理と在来の知識に基づいて持続可能な管理と農業生物多様性を促進する望ましいやり方だ。高病原性鳥インフルエンザの効率的な運び屋ではなく、ウィルスは鳥を殺さないわけではないが、このようなやり方での拡散はありそうもないという。

 最近、マレーシアの一村落の鶏がH5N1ウィルスで死んだ。しかし、死んだ鶏は全体の5%に過ぎなかった。これがその一つの例証だ。中国、ベトナム、タイなどの大発生国に取り囲まれたラオスでは、タイの孵化場から雛を供給された国の僅かな養鶏工場での発生を見ただけだ。2003年のオランダ、2004年の日本、今年のエジプトでの高病原性鳥インフルエンザの発生は、いすれも大規模養鶏工場に始まり、他の場所、地域に拡散したものだ。今年のナイジェリアでの発生も、渡り鳥の溜り場から遠く離れ、孵化用卵を輸入する閣僚所有の一つの工場養鶏場から始まった。同じく、インドにおけるH5N1ウィルスも、国最大の養鶏企業・Venkateshwara Hatcheriesが所有する養鶏工場から現れ、拡散した。[ヨーロッパの家禽にH5N1ウィルスが初めて発見されたのも、フランス・アン県の大規模七面鳥農場においてであった]

 報告は、政府や国際機関は養鶏工場とその副産物ー飼料や糞などーがウィルスをどのように拡散させているかをまったく調査しないが、これは何故なのかと問う。政府や国際機関は、危機を養鶏産業の一層の工業化のための機会として利用しているのではないかと疑う。屋外飼育禁止がはびこり、小規模生産者は締め出され、遺伝子組み換え(GM)チキンによる農場再建が称揚されている。

 著者のDevlin Kuyek博士は、「農民は生計の手段を奪われ、在来鶏は掃討されつつある、そして一部専門家は我々は数百万の人々を殺すかもしれない人間のパンデミックに瀕していると言う」と憤激する。

 関連情報
 フランス、密閉鶏舎七面鳥のH5N1ウィルス感染を確認,06.2.25
 ドイツの農場家禽に鳥インフルエンザ確認 フランスではH5N1ウィルス感染の疑い,06.2.24
 米国生物倫理学者 強毒性鳥インフルエンザの根源は工場養鶏 対策費用は工場産品課税で,05.11.15
  ワールドウォッチ報告 工場畜産の世界的拡散と環境・健康・コミュニティー破壊に警告,05.10.1