農業情報研究所
フランス:肉骨粉廃棄費用は食肉産業負担に、2003年農業予算案発表
農業情報研究所(WAPIC)
02.10.1
9月26日、フランス農水省が2003年度の農業・食料・漁業・農村関係予算案を発表した(dossier de presse :projet de loi de finances 2003)。総額は288億ユーロ(約3兆5千億円)で、2002年度に比べると、当初予算としては0.1%の増加であるが、補整後の予算(今夏、主として牛肉・ブドウ産業危機に対処するために補整が組まれた)との比較では3%の減少となる。この総額のうち、61%(176億ユーロ)が農水省予算であり、他はEU(97億ユーロ)、他の省庁(7億ユーロ)、地方自治体(8億ユーロ)から来る。農水省予算の41%(117億ユーロ)は農業社会保障予算であり、農業・食料・食品安全保証・農村開発に46億ユーロ(16%)、農業教育に13億ユーロ(4%)が当てられる。
農水省予算では農村開発と食品安全保証が優先されている。これは、EU共通農業政策(CAP)の「第二の柱」である農村開発(環境措置も含む)のためにEUから配分された予算の多額の部分が、対応する国の予算の不足により未消化になっているからである。EUの農村開発措置はEUと加盟国の共同ファイナンスが原則であり、フランスの予算はEUの農村開発措置強化に対応できず、フランスはEUにより2千100億ユーロの不使用分の払込を拒絶されてきた。この状況の是正が緊急の課題とされたわけである。
農村開発措置の増強
この「第二の柱」に8億6千200万ユーロが当てられる。このために、従来の粗放的養畜システム維持奨励金(PMSEE)を継承する新たな牧草地奨励金(詳細は未定)が創設される。農業環境措置には1億3千300億ユーロが当てられ、これは50%以上の増加となる。2億ユーロが既契約分の国土(地方)経営契約(CTE)のための支出に与えられる。ただし、新規契約は8月初め以来中断しており、とりわけこのための費用削減を目指す制度改変を検討している最中である(国土経営契約(CTE)に未来はあるのか)。森林投資も5千600億ユーロから9千200億ユーロに増額される。また、青年農業者経営創設援助金は1.9%増加し、1999年農業基本法で創設が定められながら実施されることのなかった農業イメージ改善基金も創設される。山岳地域等の条件不利地域に対する補償金は2億400万ユーロで、4.2%増加する。なお、農村開発措置の原資となるEU市場措置予算の「モジュレーション」措置は5月以来停止したままである(フランス:政府交代で農政逆戻りの兆しー「モジュレーション」停止,02.5.25)。
食品安全措置・研究開発の強化
食品安全のための予算は2.3%増加して3億9千650億ユーロとなる。農薬の監督・監視は高級技術者15人の雇用の創設で強化される。食品安全性研究予算は4.4%増加、大部分は食品衛生安全機関(AFSSA)に当てられる。AFSSAは保健省からの予算も受け取る。家畜の識別のための予算は維持される。同時に、食品の品質改善も強化される。原産地呼称(AOC)機関(INAO)予算は2.9%増加、品質マーク促進のための予算も4%増える。研究開発予算は1.3%の増加である。
肉骨粉廃棄・焼却補助金の大幅減額
以上の増額予算の大部分は、肉骨粉の廃棄・焼却のために支払われる国の補助金の大幅な減額により賄われる。このための予算は42.3%減少する。農水相はEUの規準に合わせるためと説明している。このための費用は、漸次、食肉産業が支払うことになる。
漁業・農産物公社・公共屠殺場・困窮農業者のための予算の減少
漁業総予算は2.2%(但し、海洋養殖は増加)、商品別の市場措置にかかわる農産物公社予算は14.8%減り、公共屠殺場・困窮農業者は予算を失う。また、一定の公務員は穴埋めされず、減員となる。
農業経営者連盟の反発
この発表を受け、多数派農民組合の全国農業経営者連盟(FNSEA)は、直ちに声明を発表、「フランスの全農民が希求する農業に向けての新たな野心」を挫く「バラマキ」予算と批判している(Budget 2003 de l'agriculture : le compte n'y est pas !)。その最大の不満は、市場措置による直接的な経済的支援の後退にあるようだ。声明は「農産物公社に配分される経済的介入予算の削減は非常に多くの市場が遭遇している重大な状況と両立しない」と言う。
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