農業情報研究所農業・農村・食料欧州ニュース:13年6月17日

イギリスに復活する「農民」たち 若者が田園地方再生をめざす

  ガーディアン紙が伝えるところによると、固い決意を持つ若い小規模農地保有者が、イギリスの田園地方(countryside)を巨大食品企業のくびきから解き放とうとしている。イギリスの農民階級(peasantry)は、公式には中世をもって消滅したことになっている。ところが今、数エーカーの土地に頼って暮らし、そういう生活を称揚する新種の小規模農民が世界最大の農民組織への加入を認められたというのである。

 新たに土地労働者同盟( Land Workers' Alliance)を結成したジョティー・フェルナンデスとその他のメンバーは先週、世界80ヵ国の180以上の農民組織の運動であるビア・カンペシーナ( La Via Campesina)の世界大会に出席するために、インドネシアのジャカルタにやってきた。同盟は、イングランドとウェールズでは初めて、この組織のメンバーになったのだという。

 自称イギリス”農民”のフェルナンデスは、小規模農民のために立ち上がり、イギリスの田園地方(countryside)を別のビジョンをもって再生させようと決意した。”食”と”農業”はただの経済のはなしではなく、巨大な社会的・文化的次元を獲得したと言う。

 彼女によれば、”農民”の西欧的定義は、大抵の場合、”軽蔑的”意味合いを持ち、”生存の手段としての農業労働に依存する社会的地位が低い階級のメンバー”を示唆している。しかし、3月、同盟を立ち上げた70人の多くは、若く、高度の教育を受け、土地での生活に身を捧げており、メンバーは数千 に膨れ上がるだろうという。

 フェルナンデスとその夫は、南西イングランドに高度に生産的な20エーカー(約8f)の小規模農地を持ち、野菜、ハーブ、肉、卵、チーズを作り、風力と太陽光で自家発電も行っている。産品は近所の週市で消費者に直接販売している。ここの小農民はとても創造的だと言う。

 同じく南西部・デヴォン州に小さな市場向け菜園を持つエド・ハマーは、「農業は特に政治的に目覚めた新世代の若者の想像力をとらえた」。「食べ物を作ることは、多くの人がグローバリゼーションの問題とみることへの非常に積極的な反応だ。目的は、ここイギリスの小農民の代表の欠如の問題に取り組むことだ」と言う。

 Britain's new 'peasants' down on the farm,Guardian,6.16

 日本では、農業と農村を再生できるのは、小規模農家の農地を「集積」する企業的大規模農業者以外にないと信じられている。

 関連情報
 
欧州の農地集中と土地収奪 若者等の農業参入を阻む 小農民グループの新たな研究,13.4.19