農業情報研究所>農業・農村・食料>欧州>ニュース:13年6月30日
EU 共通農業政策(CAP)改革に合意 大規模農家援助を減らし、モノカルチャーに歯止め
欧州委員会、欧州議会、EU諸国が6月26日、2年余りの議論の末、共通農業政策(CAP)改革―2014-2020年のCAPに関する合意に到達した。改革の主眼は、農業者援助の配分の国家間・農業者間の公正(平)化と環境に対する配慮の一段の強化である。EUのCAP予算の大幅削減は既に合意されているとはいえ、なおEU財政支出の38%を占める。こうした改革なしにはCAPは”納税者”の支持を失うだろう。これが改革の基本的動機であ る。
援助の公平化のための基本的措置は、歴史的基準(2000-2002年の受取額)に基づく直接支払を、面積に応じた支払に切り替えることである。
歴史的基準に基づく直接支払は、不耕作農家を含むたった20%の農家が80%の補助金を受け取るという”不公正”の最大の元凶と批判されてきた。過去の生産規模と支払額を関連付けるこの制度の下では、例えばパリ盆地の大規模穀物生産者など、2000-2002年に最大規模の生産額を誇った農家を特別に利することになるからである。
今次の改革は、このような直接支払を、徐々に保有農地面積に基づく支払に切り替える。面積基準に基づく支払を2019年までに最低でも60%にするように各国は義務づけられる。大規模農家は、現在の補助金を最大40%失う可能性がある。ただ、各国政府には、この損失を30%に抑えるオプションも与えられた。
もう一つの目玉、環境に関しては、将来のすべての直接援助の30%を農業者の環境改善行動で条件づけることが合意された。農業者がこの30%に相当する直接支払(グリーニング支払)を受け取る条件は、基本的には次の三つである。
@永年草地の維持、
A作物多様化(農業者は、農地面積が30fを超える場合には3種類以上、10fから30fの場合には2種類以上の作物を作らなねばならない)、
B15f以上の農場(永年草地は除く)の耕作可能地の少なくとも5%を”生態系保全区域”―生垣、林、休閑地、景勝地、ビオトープ等々―として維持。この比率2017年には7%に引き上げる。
違反の場合には、グリーニング支払の125%に相当する罰金が課される。
その他、新規就農青年への5%追加援助、各国のオプションとしての小農民支援策(農場規模にかかわらず500〜1500ユーロの年次支払)などの新措置も盛り込まれたが、これらを含め、機会があれば、いつか詳しく紹介したい。
妥協に妥協を重ねての改革は改革の名に値しないという環境活動家や農民運動家(ジョゼ・ボべなど)の厳しい批判もある。
しかし、専ら規模拡大・単一作目への専門化による効率改善を追求、弱きをくじき・強きを助ける日本の農政を見慣れた目には、少なくともその方向性は見習うべきものに映る。とりわけ、モノカルチャー化という世界の潮流に抗する姿勢には大きな拍手を送りたい。
Political
agreement on new direction for common agricultural policy,European
Commission.13.6.26
CAP Reform – an explanation of the main elements,European
Commission.13.6.26
UPDATE 2-EU negotiators strike deal on farm
policy reform,Reuters,13.6.26
Accord européen sur une réforme de la politique agricole commune,Le
Monde,13.6.26
EU reform puts onus on farmers to be green,FT.com.13.6.27
La Politique agricole commune sera-t-elle vraiment plus verte ?,Le
Monde,6.29.2013