農業情報研究所農業・農村・食料欧州ニュース:15年5月23日

フランス スーパーの売れ残り食品廃棄禁止へ 緑の成長のためのエネルギー移行法の一環

  フランス国民議会(下院)が5月21日、食品浪費と闘う法的措置を全会一致で採択した。これらの措置は、2050年のエネルギー消費を2012年に比べて50%減らし・再生可能資源による電力生産の比率を2020年までに40%にまで高め・原発による電力生産の比率を2025年までに50%にまで引き下げる等々を定める「緑の経済成長のためのエネルギー移行に関する法案」に定められたものである(第4編第22条)注)

 注)PROJET DE LOI relatif à la transition énergétique pour la croissance verte:http://www.assemblee-nationale.fr/14/ta-pdf/2736-p.pdf,p.73-75

 この法律によれば、食品浪費との闘いには生産者、加工業者、流通業者、消費者、諸団体のすべてが動員されねばならない。そのための行動には、優先度が高い順に、①食品浪費の防止、②寄贈または加工を通じての人の消費に適する残り物の利用、③動物飼料としての活用、④特にメタン化による再生可能エネルギー源としての利用が含まれる。

 そして、食品流通業者は、衛生に関する規則に違反することなく、売れ残り食品を故意に消費またはその他のすべての利用の形態に不適なものにすることはできない、売り場面積400平方メートル以上の食品小売店は2016年7月1日までに、フードバンク等の慈善活動団体と売れ残り食品無償譲渡の方式を定める契約を結ばねばならない(さもないと最大75000ユーロ、約1000万円の罰金か2年の懲役)。

 つまり、大中規模スーパーは、 売れ残り商品の廃棄を禁じられ、その代わりに慈善活動組織に寄贈することを義務付けられるわけだ。

 この立法について報じるガーディアン紙(イギリス)によると、フランスでは貧しい家族、生徒、失業者やホームレスが、消費期限が近いために捨てられら食べられる食品を求めて夜通しスーパーのごみ箱をあさっている。一部スーパーは、ごみ箱の食品jを食べることによる食中毒を防ぐために、ごみ箱の食品に漂白剤を降りかけたりしているが、ごみ箱の食品には腐ったものなどが混じっており、食中毒の危険は常にある。新たな立法には、こうした衛生管理上のメリットもある。

 法律は、学校や企業における食品廃棄に関する教育プログラムも導入する。これらの措置は、2025年までに食品廃棄を半減させる運動の一環をなす。フランスの公式統計によると、平均的フランス人は年間20-30㎏の食品を棄てている。うち7㎏は包装されたままだ。フランスの年間食品廃棄量は710万トン、うち67%が消費者、15%が食堂、11%が店舗から出たものという。

 France to force big supermarkets to give unsold food to charities,The Guardian,15.5.23

 スーパーの売れ残り食品廃棄を禁じるのは、おそらく世界で初めてであろう。イギリスは自主的協定にとどまっているし、日本では特にスーパーをゲットとする施策はない。

 UK supermarkets face mounting pressure to cut food waste,The Guardian,13.11.

 食品ロス削減に向けて~「もったいない」を取り戻そう!~ 農林水産省 平成25年9月

 関連情報・ニュース

 Invendus alimentaires : la distribution s’organise pour éviter de trop jeter ,Le Monde,15.5.23

 EU欧州議会 食品廃棄物半減を 食品大量浪費は倫理的・経済的・環境的に許されない,12.1..26