移動鶏舎オーガニック卵 ドイツ有機農業の新たな有望分野 日本でも試みる農家いませんか?

農業情報研究所農業・農村・食料欧州ニュース:16年9月10日

 昨日、オーストラリア・ABC Rural Newsの”パスチャード卵”の記事を紹介したが(オーストラリア フリーレンジ卵改めパスチャード卵 11万羽の基準決定で放し飼い卵生産者)、今日のABC Rural Newsは、ドイツの有機農家が”パスチャード卵生産”に新たな展望をもたらしていると報じている。

 地味豊かで、降水に恵まれた土地に立地する43㌶の有機農場、豚を育て・農場内で屠畜、肉にしてオーガニック・ショップやカフェで直販する、毎年150トンのジャガイモを生産するほか、トウモロコシ、ライムギ、小麦も作り、やはり農場内で製粉してパンに焼く、パン焼き釜の余熱でひよこを育て、移動鶏舎と草地で肉鶏・採卵鶏を飼育する。

 800羽を収容する移動式大型鶏舎(ハウス)を三つ持ち、ハウスは週ごとにより緑の濃い草地を求めて移動、持ち運びできるフェンスで囲う。オーストラリアのように、犬に番をさせる必要はない。有機l穀物飼料と水は屋内に置いてある。鶏は夜は屋内に泊り(屋外ではキツネに襲われる)、昼は放たれ、好きなところに行く。

 こうして育てられた有機フリーレンジ鶏の肉は通常の5倍のキロ15ユーロ(1725円)で売れる。”移動鶏舎オーガニック”と表示されたパスチャード卵はキロ6.50ユーロ(750円、日本の卸売価格は200円前後)で売る。

 

 Germany's organic farm Stautenhof driving pastured egg production in Europe,ABC Rural News,16.9.10

 記事は大規模モノカルチャーが標準になっており、有機農業がなお隙間産業にとどまっているオーストラリアでは(ドイツでは全農場の8%、23300が有機農場)、こんな農場は想像するのも難しいと言うが、日本では真似できないわけでもなさそうだ。日本農業が進むべき道はこんなところにも見出されるのかもしれない。日本のマスコミも一つ覚えの大規模化(農地集積)や生産資器材価格引き下げ(統制経済?)を言い立てる暇があったら、ABCに倣い、こんな外国の模範例を集めてみたらどうだ。その方がよっぽど日本農業のためになる。