農業情報研究所>農業・農村・食料>欧州>ニュース:20年10月29日
採油用ナタネの収量低迷の原因は気候変動 フランスの研究
2008年6月、フランス・欧州の当時10年来の穀物収量の低迷の原因に関するフランスの研究を紹介した(仏・欧穀物収量の10年来の低迷の原因は土壌有機物欠乏?―フランスの研究 08.6.30)。
気候変動の問題は別として、窒素肥料投入の減少、水不足、農薬使用減少などが考えられるが、どれも確証が得らない。結局、最も有力な仮説として取りあげられたのが、堆肥投入の減少、土壌の植物による被覆の欠如、土壌の激しい耕起が土壌有機物を減少させ、土壌の肥沃度を損なっているという「有機物仮設」であった。
ところで最近、この研究では脇に置かれていた気候変動の影響を正面から取り上げた研究が現れた。採油用ナタネに限られた研究であるが、植物油・蛋白質産業研究所(Terres
Inovia)の研究である。
フランスの平均気温が上昇を始めた1980年代末を境に採油用ナタネの収量が伸びなくなった(注)。この30年来、ナタネは気候変動、特に春季と夏季の気温上昇と雨不足の影響を受けているという。
播種時の降水不足・欠如は作付け準備を難しくし、春季の干ばつは窒素の肥効を弱め、生長を遅くする。開花期は特に水不足に敏感だ。
高温の穀粒形成への影響はないものの、光合成の効率を減らし、登熟に影響する。気温が29度を超えると花の数が減り、穀物収量が減る。
Hausse
des températures, déficit de pluie : quels impacts sur les colzas ? Agri Mutuel,20.11.28
ナタネに限った研究だが、他の穀物(トウモロコシ、小麦など)収量への気候変動の影響はどうなのだろうか。
(注)