農業情報研究所>農業・農村・食料>欧州>ニュース:17年10月22日
スイスで農家が享受する数々の特権 「構造改革のトレッドミル」には勝てず?
Swissinfoによると、スイス農民はその強力な政治活動により、他の職業分野では見られない特権的待遇を享受している。農業部門は輸入制限や補助金を通して保護されるとともに、農民は次に挙げるような数々の特権も享受しているとのことである。 The
privileges of being a farmer in Switzerland,swissinfo,17.10.21 低コストの燃料
農民のガソリンまたはディーゼルの1リットル当たりコストは、他の道路ユーザーに比べて60サンチームほど少ない。農民は鉱物油税の払い戻しを請求できる。また、ビジネスのサイズに応じ、一定量のディスカウント燃料を利用することできる(2015年、全体で6500万スイスフランが農民に払いもどされた)。
家族手当 普通の勤め人は俸給の一部としての家族手当を受け取る。農民の場合、連邦と州の政府が家族手当を支払う。農民だけでなく、農場で働く家族も、その所得レベルと無関係に家族手当を受け取ることができる。2015年、そのために納税者は9700万スイスを払った。農民は家族でない従業員のための手当て負担金を払うだけである。
職業訓練
農業をやめる場合、連邦当局が転職のための職業訓練費用の半分を支払う。
税優遇
農民は、不動産の推定賃貸価格に基づく低減税率の恩恵に浴する。農民家族の住居支出は、他の家庭の住居支出の半分程度である。食肉、ポテト、パン、卵などの直接販売について付加価値税を払う義務がない。
輸送
ナンバープレートで指定された農業用自動車は重量物運搬車税を免除される。それに加え、日曜日と夜間の重量車運転の禁止も免れる。
大気汚染抑制
大気汚染を減らすために建設機械は微粒子捕集フィルターを備え付ける義務を負っているが、農業及び林業機械は例外となっている。 投資資金
住居、小屋、農場店舗などの農業インフラには無利子融資がされる。2015年、このために3億スイスフランが融資された。
例外
スイス農民協会は農業部門が他の分野に比べて優遇されていることを否定している。「農業活動に限られたさまざまな特別な例外措置がある」とのことである。
例えば農家のガソリン代をまけるとか、農家向け家族手当を創設するとか、日本の農業・農村政策も何か学ぶところがあるだろうか。ちなみに、スイスの農家数は1990年から2009年の間に半減したそうである。無いよりはマシだが、この程度の農家優遇措置では「構造改革のトレッドミル」には勝てないことは確かなようだ(構造改革のトレッドミルを走り続けるスイス小農民 財政的・精神的破綻で1980年の半分に,17.3.6)。 |