農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2010年12月2日

世界食料品価格が急騰 2008年食料危機時を超える恐れも

 12月1日、このところブッシェル6ドル代前半に落ち着いていたシカゴ商品取引所の小麦先物相場が、主要輸出国の天候不安から3週間前に記録した7ドルにまで一気に跳ね上がった。一方では、米国やロシアの干天が最近播かれたばかりの冬小麦の収穫に悪影響を与える恐れがある。他方では、収穫期に入ったオーストラリアは大雨で、収穫が遅れるとともに品質低下の恐れが高まっている。そんななか、エジプトが22万トンもの米国小麦の輸入入札実施を発表した。

 インフレ抑制策で中国の需要が減るという予想からこのところ低迷気味だったトウモロコシと大豆も、逆に中国の食料インフレ抑制のための輸入が増えるという思惑から急騰した(参照:シカゴ商品取引所穀物等先物相場(期近):最新260取引日)。食料インフレ抑制の動きは、肉消費が増え続ける中国の飼料穀物・大豆の需要を減らす恐れはないという見方が強まっている。

 Corn, Soybeans Rally as China Growth May Spur Demand for U.S. Crop Exports,Bloomberg,12.1
 http://www.bloomberg.com/news/2010-12-01/corn-soybeans-rally-as-china-growth-may-spur-demand-for-u-s-crop-exports.html

 国連食糧農業機関(FAO)が12月1日に発表した11月の世界食料価格指数は、過去最高の2008年6月の指数にあと4ポイントに迫る205.4に達した。小麦、トウモロコシ、大豆のシカゴ先物相場の動向、タイ水害 を契機とする米国際相場の上昇(国際米価格の最近の推移)、中国等の需要増を睨んだパームオイル価格の急騰 (CPO(パームオイル粗油)先物相場(マレーシア:BMD:期近)の推移)などを考えれば、FAO食料価格指数が過去最高を超える日も近いだろう。

 http://www.fao.org/worldfoodsituation/wfs-home/en/

 多くの途上国では、暴動まで引き起こした2007〜08年の世界食料危機が再来するかもしれないという懸念が高まっている。中国やインドでも、食料インフレ―社会不安への恐れは強まるばかりだ。都市化(建築ブーム)による農地減少が止まらない中国では、穀物(大豆も含む)のみならず、野菜さえも、国内生産では国民の需要を満たせなくなっている。11月の最初の2週間の野菜18種の平均小売価格は、昨年同期に比べて62%も上昇した(商務部)。

 この新たな価格指数発表の前に出たFAOの最新「フード・アウトルック(11月)」は、米、小麦、食用トウモロコシの供給の豊かさを考えると、2007〜08年の危機が今シーズンに繰り返されるリスクは減るが、それでも、「いくつかの主要生産国における収穫見通しの一連の予想外の下方修正に続き、世界価格は恐怖を抱かせるほどに、2007/08年よりもずっと早いペースで上昇した。いまや、注意は次の(2011/12)販売シーズンの作付に向けられる。世界在庫が減ると予想されるから、国際市場の安定には来年の生産規模が決定的に重要だ」と警告していた。

 http://www.fao.org/docrep/013/al969e/al969e00.pdf

 その来年の生産規模が、早くも危ぶまれる事態になっている。

 そんな中で、日本はコメ減反をさらに強化する。畑作は増産を目指すというが、「道内一の小麦産地、十勝管内の本年産小麦の収量が当初計画比53%の12万6千トンにとどまり、過去10年間で最低水準に落ち込む見通しであることが22日分かった。今年夏の猛暑の影響とみられ、通常9割を超える1等比率も5割を下回る。昨年に続き2年連続の不作で、農家経営にも影響が及びそうだ」(十勝産小麦の収量、過去10年で最低 猛暑影響 1等比率も下落 北海道新聞 10.11.23)。戸別所得補償が導入されても、増産実現の保証はまったくない。しばらく下がり気味だった日本の農水畜産物消費者物価指数も、コメは例外として、全体的に上昇を始めている。