米議会上院も新農業法案可決 大統領拒否権も無効の可能性が大

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.16

  14日の米議会下院による新農業法可決に続き、15日には下院も81対15の圧倒的多数で同じ法案を採択した。共和党議員35人も賛成に回ったという。

 Farm Bill, Facing Veto, Goes to Bush,The New York Times,5.16
 http://www.nytimes.com/2008/05/16/washington/16farm.html?ref=us

 ブッシュ大統領は既に拒否権を発動、2002年農業法を1年間延長適用すると表明しているが、もし上下両院が3分の2以上で再可決(近頃流行っているようだ)すれば、拒否権は無効になる。大統領による切り崩しが始まろうが、下院は318人の賛成議員のうちの35人以上、上院では81人の賛成議員のうちの17人以上を翻意させねばならず、再可決阻止にはあまり現実味はなさそうだ。

 ただ、どっちに転んだところで、途上国がこぞって大幅削減、あるいは撤廃を求めるカウンターサイクル支払等の”貿易歪曲的”補助金は温存される。米国が市場開放要求を大きく後退させないかぎり、あるいは途上国の強力な国内市場保護措置を認めないかぎり、ドーハ・ラウンド妥結はあり得ない。

 なお、議会採択法案が今後5年間に認める3000億ドルの支出の大まかな内訳は次のとおり。

 ・フードスタンプ及びその他の国内栄養プログラム(国内食料・栄養援助):2000億ドル(66%)

 ・米、小麦、トウモロコシ、大豆、綿花、その他作物補助金:430億ドル(14%)

 ・土壌・環境保全のための休耕プログラム:270億ドル(9%)

 ・作物保険:230億ドル(8%)

 ・外国食料援助:2億ドル

 Glance: A cost breakdown of farm bill programs,AP
 http://ap.google.com/article/ALeqM5jPbNol-8wPcbBYODjcwFzKbWiAaAD90LU8CG1

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