米農務省 ペナルティーなしでの保全休耕契約早期解除を認めず

 農業情報研究所(WAPIC)

08.7.31

 シェーファー米国農務長官が7月29日、保全休耕プログラム(CRP)に基づく休耕契約のぺナルティーなしでの解約を許すかどうかの検討を完了、現時点ではペナルティーなしでの早期解約は許さないことに決めたと発表した。

   Statement of Secretary Ed Schafer Discusses Conservation Reserve Program Decision,USDA,08.7.29

 保全休耕プログラムとは、土壌浸食防止、野生動物保護などのために、浸食を受けやすい農地の所有者がその土地での耕作を10-15年停止して植生の回復を図ることを約束(国と契約)、その見返りに国からの補助金を受け取るというものだ。このような保全休耕地は、現在、およそ3500万エーカー(1400万f)にのぼるとされる。

 トウモロコシや大豆の価格高騰の恩恵にフルに与ろうとする生産者、価格沈静を望む食品・畜産・バイオ燃料業界、共にこのような大量の保全休耕地を早急に生産に戻すべきだと 主張してきた。ところが、現在の制度では、満期前に解約し、農地に戻そうとするならば、これまでに受け取った補助金全額とこの間の利息を返済した上に、ペナルティーまで払わねばならない。従って、早期解約を促すために、このぺナルティーの免除を要望してきたわけだ。

 今回の決定をした第一の理由としてあげるのは、先月中西部を襲った洪水にもかかわらず、今年のトウモロコシと大豆の収穫への影響は当初恐れたよりも軽微と見られるということである。洪水による損害と作付の遅れを見込んでも、今年のトウモロコシ収穫面積は史上2番目の7900万エーカー(3160万f)になると予想される。好転する収穫予想に市場も反応、トウモロコシと大豆の現物価格は、先月に比べてそれぞれ25%、14%下落した。現状でも今年の食料・飼料・バイオ燃料用トウモロコシ需要は確実に賄うことができる。最近の価格下落傾向は畜産業の助けになり、またCDP契約者が契約を早期に解約すべきかどうかの情報に基づく決定をすることも可能にするという。

 第二の理由は、08年農業法でCRP契約の既契約分も含めた上限総面積が3920万(1568万f)から3200万エーカー(1280万f)引き下げられたことである。従って、現在契約されている3470万エーカー(1388f)は必然的に縮小せざるを得ない。そして、今年9月30日には110万エーカー、来年9月30日には380万エーカー、2010年9月30日には440万エーカーの契約が満期を迎える。土地所有者が契約を打ち切ろうと望めば、大量の土地が他の用途に利用できるようになるという。

 もちろん、受け取った補助金+利息とペナルティーを払えば早期解約もでき、今年の春はこのような解約は去年よりも50%増えたことは、このような選択も経済的に意味があることを示している。そのうえ、5月には草地に巣を作る野鳥の営巣期間が終わったのちの保全休耕地で草や飼料作物を作ることを許した。

 だから、ペナルティーなしでの早期解約を認めないという今日の決定は、自然資源の保護と国の穀物生産の必要性との間の最善のバランスを取るものだという。 


 この決定を受け、先週初め以来5ドル(/ブッシェル)に落ち込んでいたシカゴ商品取引所トウモロコシ先物相場(期近)は30日、早速6ドル台を取り戻した。

 関連情報
 米国農家 作物価格高騰で保全休耕地を耕作地に 09年までに日本の水田総面積分,08.4.5
 米国 保全休耕地で飼料栽培 穀物価格高騰で苦しむ畜産業を救う,08.5.28