英国 消費者の圧力でスーパーの国産有機産品仕入れが増加ー土壌協会の主張

農業情報研究所(WAPIC)

06.4.20

 英国・ガーディアン紙によると、英国のスーパーが、消費者の要求により、有機産品を環境を大きく犠牲にして海外から運ぶよりも、大部分を英国農民から購入することを余儀なくされている。

 英国の有機農業団体・土壌協会のスーパーマーケット調査によると、平均的スーパーで購入できるリンゴ、肉、タマネギなどの有機基本食品に占める英国産品の比率は、2003年の72%から2005年には82%に高まった。

 専門家は、輸入が輸送に使われる化石燃料を通して環境を痛めつけるなら、有機産品を仕入れる利点は何もないと言う。土壌協会は、ニュージーランド産のリンゴ1kgは1kgの二酸化炭素を生み出すが、英国産リンゴが生み出す二酸化炭素は50gに過ぎないと言っている。

 土壌協会は、市民の圧力が5つの大規模スーパーに国産有機産品の仕入れを促したと主張する。テスコ、アスダ、モリソンズは、昨年、大量の有機豚・牛肉を輸入していた。テスコが仕入れる有機豚肉と有機牛肉のうちの英国産の比率は、昨年はそれぞれ58%、52%だったが、今では74%、71%になっている。

 また、英国人は傷のついたリンゴへの抵抗感も減っているように見える。傷のないリンゴには需要がないと小売業者が考えるために、英国で販売される非有機リンゴの70%は輸入されている。しかし、英国産有機リンゴの需要は増えつつある。2004年にスーパーが仕入れたリンゴの24%が英国産だったが、昨年は40%に増えた。

 土壌協会のピーター・メルシェット政策理事は、調査は消費者がスーパーのなすがままにはなっていないことを示したと言う。

 Public pressure boosts British organic food,Guardian,4.20
 http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1757084,00.html

 結構なことだ。しかし、ヨーロッパへの有機産品輸出の期待を膨らませるアフリカ諸国にとって、これは結構なことだろうか(IFOAMと国連2機関が東アフリカ有機基準開発促進プロジェクトを発表,06.3.9)。バランスを取るのは難しい。ただ、英国は2004年、ドイツに生鮮ポテト1500トンを輸出、同じものをドイツから1500トン輸入した。ショウガ入り焼き菓子を465トン輸入し、同じものを460トン輸入した。1万200トンの乳とクリームをフランスに輸出、9900トンの酪農製品をフランスから輸入した。

 「私は米国でイタリアのコーヒーを飲み、すしを食べ、フランスワインを飲んでいる。世界中の最高のものが米国で手に入る。すばらしいことだ」(ノーベル賞経済学者・ロバート・ルーカス)。こんなグローバリゼーション賛歌を全面否定するつもりはない。しかし、こんな無駄な貿易をやめれば、”エコロジカル負債”発生日も多少は延びるだろう(早まる自国資源を使い果たす日、今年の英国は4月16日、日本は3月3日,06.3.17)。