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カナダ首相、小泉首相に牛肉輸入禁止解除を要請

農業情報研究所(WAPIC)

03.7.2

 マスコミ報道によると、カナダのクレチアン首相が、1日、カナダ・デー祝典に出かける前、日本の小泉首相に16分間の電話をかけ、日本のカナダ牛肉輸入禁止は科学的根拠がなく、国境を開くように要請したという。

 この記事は、首相は日本の当局をカナダ牛肉は安全だと説得せねばならず、それまでは日本がカナダ牛肉を含む恐れがある米国牛肉の輸入を許さず、結果として米国当局がカナダに国境を開くことはないと報じる。カナダ外務・貿易相は、カナダ牛の米国市場へのアクセスは、今や政府の最優先事項だと語ったという。つまり、米国市場を開かせるためには、先ず日本の市場を開かせる必要があるという脈絡で、この電話要請になったらしい。

 小泉首相は7月12日に農相をカナダに送ると答えただけだが、クレチアン首相のスポークスマンは「非常にポジティブなステップ」と見ると語ったという。ただ、同スポークスマンは、日本の農相がカナダにやって来るのになぜ12日もかかるのか、それまで我々にできることは何もないと述べたそうである。禁輸は生産者に一日1千万ドルから2千万ドルのコストをかけており、多くが破産に瀕しているのに、事の緊急性がまったくわかっていないと不満らしい。

 しかし、この動きを見ると、先月末の国際獣疫事務局(OIE)の調査団の報告の意味は、首相も貿易相もまったく理解していないようだ。相変わらず、たった一頭のBSEが出ただけで、その後は発見されていないのだから、禁輸には科学的根拠がないという論理がまかり通っている。これでは、報告が勧告した特定危険部位の除去など、いつになったら実施するのか想像もつかない。これを実施するつもりはないという情報もある。

 日本の農相はカナダでどう対応するのだろうか。全面禁輸は日本だけが取った措置ではなく、米国を始め、20ヵ国が継続している。この「過剰防衛」も、カナダが何らかの安全保証措置を取らないかぎり、正当化されよう。しかし、その継続はカナダの生産者と経済の巨額の損害を増やすばかりである。OIE調査団が最優先で実施すべきと勧告した特定危険部位の除去は、リスクを最小限に食い止める手段であり、全面禁輸よりもはるかに少ないコストを課すだけである。これが最善の道とカナダを説得するのかベストの選択であろう。

 PM pressures Japan to open its border to beef,The Globe and Mail,7.2

 関連情報
 カナダ:専門家報告書、BSE存在のリスク確認、危険部位排除勧告,03.6.30
  追記(03.7.1):OIE専門家、日本のカナダに対する輸出牛検査要求は正当化できない