カナダ食品監視庁がBSE調査報告、北米のリスクは一体

農業情報研究所(WAPIC)

03.7.4

 5月に確認されたカナダのBSEの感染源を探る調査が続いている。感染源の究明と相補的な関係にある感染牛の出生場所・時期の確定のための調査と並行し、膨大な調査が行なわれている。確定的な答えは未だ出ていないが、7月3日、カナダ食品監視庁(CFIA)がこれまでの調査に関する報告(NARRATIVE BACKGROUND TO CANADA’S ASSESSMENT OF AND RESPONSE TO THE BSE OCCURRENCE IN ALBERTA)を発表した。国際獣疫事務局(OIE)の調査チームの報告は、これまでの調査で北米にBSEが存在するリスクが確認されたのだから、もはやこのような大掛かりな調査は止めて、このリスクに対応した措置を早急に取るべきだと勧告した。しかし、この報告でカナダの調査の結果を詳しく知ることはできなかった。従って、CFIAの新たな報告に基づき、これまでに何がわかったのか、わからないのか、以下にまとめて紹介する。

 ・感染牛はブラック・アンガス種で、2001−02年に構築された80頭の牛群に含まれていた。

 ・感染牛の年齢は6歳であった可能性が非常に高い。

 ・潜伏期間との関係から、曝された病原体の量は微量で、感染中枢神経組織で0.01グラムと推定される。

 ・感染牛の身元は、5月末までに、80頭から7頭に絞られた。DNA検査で確定する作業をしたが、未だ確定できない。この過程で2,700頭が屠殺処分された。

 ・感染源として疑われる飼料が調査された。肉骨粉に暴露のないサイトが96%、事故による暴露があるサイトが3%、ミキサーからの漏れ・豚飼料への羊のアクセス・牛や山羊による飼料袋の破損による暴露が1%であった。この調査の過程で、豚用飼料に63頭の牛が暴露される可能性が排除できない三つの農場が追加調査され、牛は屠殺・検査したが陰性であった。

 ・感染源として、母畜、イギリスからの輸入牛で汚染された飼料、国内または野生のシカ類の慢性ウエイスティング病(CWD)あるいはその他の土着または輸入反芻動物内の伝達性海綿状脳症宿主(スクレイピーの羊など)、輸入肉骨粉を想定して調査。この感染が自然発生的なものである可能性は排除。

 ・CWDへの直接暴露の可能性はまったくないわけではないが状況からして低いとされた。スクレイピーはこの報告では考察外(スクレイピーからのBSEはイギリスの研究からも考えられない)。

 ・イギリスからカナダ西部(特にアルバータ)にかつて入った大量の牛からのBSEが、1997年の飼料規制以前、リサイクルされ、広がったことは十分に考えられる(1993年にイギリスからの輸入牛1頭にBSEが確認されている)。これは貿易の特徴からして、米国北部にも拡散したと想定できる。

 イギリスから輸入された牛がBSEに感染していたかどうかを調べるために、保存されている脳を改良された検査で再調査するとともに、これら輸入牛が属した牛群にその後BSEがでていないかどうか決定するためにイギリスと協力してきた。

 ・その他の輸入元として米国も考慮。カナダの輸入牛の99%はアメリカからのものである。特にリスクが高いと認められる2万5,000の輸入妊娠牛の79−80%がブラック・アンガス種であった。飼料流通の状況と考え合わせると、これらもカナダの飼料に入り込んだであろう。DNA調査は続いているが、いままでのところ、「感染牛がこの巨大で、ユニークな輸入から発生した可能性を排除することはできない」。この可能性は、CWDに感染したシカ類についても排除できない。

 米国が感染牛の起原、または汚染飼料の源泉である可能性は、なお研究を継続する多くの感染経路の一つである。「北米自由貿易協定(NAFTA)の貿易関係を前提とすると、米国の屠体から作られた肉骨粉のカナダ西部への回流を想定するのは当を得ないことではない」。

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