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フランス:食品衛生安全機関、擬似患畜の基準緩和にゴー・サイン

農業情報研究所(WAPIC)

02.10.22

 10月11日フランス食品衛生安全機関(AFSSA)は、狂牛病(BSE)発生の際して淘汰(処分)されるべき牛(わが国では「擬似患畜」と呼ばれる)の範囲に関する基準を緩和するなどの規定を盛り込んだ農水省食料総局のBSE衛生取締り規則(1990年12月3日のアレテ)修正案を認める意見書を公表した(Avis de l'Agence concernant un projet d'arrêté modifiant l'arrêté du 3 décembre 1990 relatif à la police sanitaire de l'ESB)。

 食料総局の案は次のようなものであった。

 ・BSEに罹った牛(病牛)が生後1年間居た経営だけにとどめるように、監視下に置かれるべきリスクの高いとみなされる経営の定義を修正する。
 今までは、BSEの疑いが確認される2年前まで嫌疑牛を保有した経営を除き、嫌疑牛保有経営が監視下に置かれてきた。

 ・病牛の「コーホート」に属する牛だけを排除(処分)するように、これら経営内の牛の範囲を定める規則を修正する。ここで「コーホート」の定義は、EU規則No.999/2001(一定の伝達性海綿状脳症の予防・統制・排除にための規則を定める2001年5月22日の欧州議会及び理事会規則)が提案しているもので、「病牛の出生の前後12ヶ月の間にこの病牛が生まれた牛群内で生まれた牛、または生後12ヶ月の期間中の何らかの期間に病牛と共に育てられ、また生後12ヶ月の間に病牛が消費したのと同じ飼料を消費した可能性がある牛のすべて」である。
 今までは、疫学的調査によりBSE病源体に曝される危険がないとされた経営内生産単位に属する牛を除き、2002年1月1日以前に生まれた経営内のすべての牛が処分されてきた。

 ・雌病牛から生まれた子牛は、この母牛の死または病気の症候の発現に先立つ2年の間か、症候の発現の後2年の間に生まれたものであるならば、すべてを排除する。
 今までは、嫌疑牛から生まれた子牛の調査が規定されていただけである。

 AFSSAは、かねて、基準を緩和しても消費者安全のレベルの確保ができるかどうかの評価のためには、特定危険部位の除去の有効性、「コーホート」外の牛のリスク、診断の正確性、1996年以来の措置の効果など様々な要素の検討が必要として、これらの要素の確認に応じた段階的緩和の可能性を示唆してきた。その第一段階が、2002年1月1日以後に生まれた牛を淘汰の対象外とすることを認める今年1月の意見書であった(フランス:BSE確認後の屠殺・廃棄政策変更へー2002年1月以後生まれの牛は廃棄対象外にー,1.10)。これは、この日以後生まれた牛については、肉骨粉の全面使用禁止(その実効性)により、飼料を通してのBSE感染のリスクが非常に小さいことを根拠としていた。

 AFSSAは、それ以後に行なわれた研究プログラム・調査が、さらなる緩和の是非の評価を可能にしたという。今回は、特に関係牛群中の感染牛出現の度合い、検査により感染牛が間違ってシロと判定される可能性、中枢神経組織(危険部位)の除去の有効性が考慮された。

 牛群中の感染牛出現頻度については、屠殺牛群中の検査された約2万5千頭の牛のうち、4頭が陽性であったが、この4頭すべてが「コーホート」に属し、新たな規則によっても処分の対象となるものであった。しかし、牛群のすべての牛は、病牛発見後、非常に短い期間内に同時に屠殺されるから、検査が発見できるまでに病気が進展していない感染牛が含まれる可能性を否定できない。この可能性を斟酌するために、検査された牛の頭数の規模や間違ってシロと判定される比率を考慮して、このアプローチの限界が推定された。計算の結果は、間違ってシロとされ、人間の消費に供される牛は年に0.06頭から0.212頭というものであった。このことと、これらの牛の危険部位は除去されることから、AFSSAは修正案に同意する結論を出すことになった。

 ただ、リスクの高い経営については、病気が発見された牛が出生後2年の間に育てられた経営とすべきだと勧告している。また、新たな措置には、病牛が発見された牛群出自の牛の検査結果の特別の登録を伴なうべきだとも言う。このカテゴリーの牛におけるBSE発生率の変化を検証し、それが高まったときの対応を可能にするためである。また、消費者の安全確保のためには、特定危険部位の除去が重要であることを改めて喚起している。

 なお、EU諸国の中では、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペイン、オランダの4ヵ国が出生コーホートによる処分を行なっている。

 関連情報
 フランス:農水省、同居牛等廃棄政策緩和をAFSSAに諮問,02.9.11