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英国:FSA評議会、BSE30ヵ月以上ルール廃止勧告に合意

農業情報研究所(WAPIC)

03.7.16

 イギリス食品基準庁(FSA)評議会は、7月10日、30ヵ月以上の牛すべてを食用から排除する人間の狂牛病(BSE)感染防止ルール(OTM)を、二段階に分けて30ヵ月以上の牛のBSE検査に置き換えることを政府に勧告することで合意した。この措置の内容や背景については既に報じた(イギリス:食品基準庁、30ヵ月以上ルール廃止を提案へ,03.7.8)ので詳細は省くが、1996年8月以後に生まれた牛は、最も早くて2004年1月から、その他については2005年7月から、BSE検査の後に食用に流通させることが許されることになる。

 ただし、イギリス全体の政府関連部局や産業、その他の関連機関による準備が整うまでは、提案された変更は実施しないように政府に求めている。環境・食料・農村省(DEFRA)がこれらの調整の任を負う。変更が実施されるまでは、イギリス牛肉と輸入品に関するOTMルールが残る。変更実施後は、検査でBSE陽性となった牛は廃棄される。牛に存在するBSE感染性の99%を除去する特定危険部位のコントロール、牛への肉骨粉給餌の禁止などのその他の主要コントロール手段の変更はない。さらに、BSE検査システムに関する独立審査報告が毎月出され、最終報告が公表されることにも合意した。

 しかし、このような変更の実施には、なお未解決の多くの問題が残されているようだ。英国消費者協会(Consumer's Association)は、FSAの勧告が、新たな検査システムが有効に機能し、執行される得ることをDEFRAが証明する場合にのみ、このような変更を実施すべきだというその主張を認めたと歓迎した(CA's response to the FSA's announcement on the Over Thirty Month Rule,03.7.11)。しかし、DEFRAはこれを本当に証明できるのか。消費者協会はDEFRAに次のことを要求している。

 ・検査システム導入をめぐる多くの不安に取り組むための詳細なプランに関する作業に、開放的で透明な協議のプロセスで直ちに取りかかること。これは、検査の信頼性、潜伏早期のBSEの発見方法、陽性の牛をさらなる汚染を引き起こすことなく屠殺場から排除する方法などの問題に焦点を当てねばならない。30ヵ月以上の牛の識別とトレーサビリティーに関する既存のコントロールは、関係する牛の数が増えるなかで有効に機能し、適切に執行されるように強化されねばならない。

 ・食肉処理場と食肉衛生局のスタッフの適切な訓練の確保。協会は、特に、DEFRAが食肉衛生局よりも屠殺場がサンプルを取ることを提案していることを懸念している。これは他のEU諸国の検査が政府機関により行なわれていることに反する。

 ・既に検査システムを実施している他のEU諸国からどんな教訓を引き出せるかの研究を委嘱すること。

 ・多くの質問が未解答になっていることから、協会は、システム始動の日からの有効性を確保するために、検査体制設置の前にDEFRAがパイロット研究を導入すること必要性を強調する。

 ・政府は検査システムの必要な構成要素が確立する前に変更に走ってはならないというFSA評議会の見解を支持する。

 ・これらの変更がBSEコントロール措置がもはや食肉産業の優先事項でないと感じさせることになるコントロールの緩和と受け取られないように保証すること。これは今まで以上に重要になる。BSEの取り扱いで最初に直面した問題の一つは、BSEは現実にはリスクではなく、コントロールが完全に実施され、執行されるかどうかは問題ではないという感情であった。