スイス:BSE発生は減らず、獣医局がBSE根絶の困難を強調

農業情報研究所(WAPIC)

04.1.6

 1月5日、スイス連邦経済省の連邦獣医局(OVF)が2003年の狂牛病(BSE)発生状況を発表した(Communiqué de presse:Léger recul du nombre de cas d’ESB)。同年中に確認されたBSEのケースは21件で、前年の24件(01年は42件)から僅かな減少にとどまった。

 21頭のうち19頭は、基本的にはリスクの高い牛(斃死牛または衛生上の理由で屠殺された牛)を対象とする26万頭の公的検査により発見された。他の2頭は、大規模流通業者や屠殺場の自主的検査(15万頭を検査)で発見されたものである。後者の検査で発見された件数は、01年13頭、02年5頭であったから、大きく減ったことになる。このことは、牛の保有者や獣医によるBSEの症候を示す牛の監視がしっかりし、公的検査に出される件数が増えたことを立証するものとされている。

 BSEと確認されたケースの大部分が96年から99年の間に生まれたものであったことから、OVFは、改めて肉骨粉の全面禁止が不可欠であることを強調している。スイスでは90年11月に最初のBSEが確認された。以来、危険部位を食用から排除する消費者保護措置を講じるとともに、動物起原の蛋白質を含む飼料を牛に与えることを禁止してきた。しかし、95年まで、BSE発生は増え続け、95、96年以後は、この飼料禁止後に生まれた牛のBSEも発見されるようになった。そのために、96年には、30ヵ月以上の牛の脳・脊髄・眼を直ちに焼却するようにし、これらを豚・鶏・ペットの飼料からも排除した。それでも、この措置の実施後に生まれた牛の感染が防げないことがはっきりした。

 連邦議会はすべての動物に動物起原の肉骨粉を与えることを禁じる全面禁止を決定、これは2001年1月から実施されているが、03年の検査結果を受け、OVFはこの措置が不可欠と改めて再確認したわけだ。2000年までに取られた措置は、BSEを根絶するには不十分であったと認めている。

 スイスやフランス等の大陸ヨーロッパ諸国では、全面禁止がBSE根絶につながったかどうか確認できる時期に達していない。しかし、英国では、全面禁止後に生まれた牛のBSEが次々と確認されるようになっている。肉骨粉全面禁止によっても、BSEが根絶できない可能性はなお残る。OVFは、微量の感染動物肉骨粉でも牛が感染するには十分だから、BSE根絶とういう目標の達成のためには、BSE防除措置の厳格な実施と、あらゆるレベルでの厳しいコントロールが不可欠だとしている。

 反芻動物蛋白質を反芻動物に与えることを禁止したからBSE拡散の可能性は極度に少ないと主張する米国やカナダは、これらの経験から何も学んでいないようだ。それどころか、鶏が食べ残した牛から作られた肉骨粉飼料を(鶏の排泄物・羽・敷藁と一緒に)牛に与えることは合法だし、反芻動物肉骨粉を含む古くなったペットフードも廃物回収品として売られ、最終的には牛の飼料となるなど、目に見える「交差汚染」源でさえ野放しだ。1頭でも感染牛が出たとすれば、これらの餌を通じてBSEが再生産されてきた可能性は否定し難い。もしそうであれば、BSE「清浄国」だからと米国から種牛を輸入してきたオーストラリアにさえ、BSEを輸出していた恐れまで出てくる(オーストラリアには2,500万頭の牛がいるが、BSE検査を受けるのは02年460頭、03年394頭のリスク牛だけだ)。しかし、「清浄国」としての責任を自覚している風はサラサラ見えない。

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 英国:再燃するBSEの脅威―肉骨粉禁止後生まれの感染が急増,03.11.25

農業情報研究所(WAPIC)

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