全米穀物・飼料協会、FDAのBSE飼料関連規制パブリック・コメント延長を歓迎

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.13

 全米穀物・飼料協会(NGFA)が9日、BSE拡散防止のための飼料規制ルールの変更を、食品医薬局(FDA)がまたもパブリック・コメントに付したことを歓迎する声明を出した(NGFA Statement on FDAs BSE-Prevention Feed Rule Announcement )。このホームページで10日、FDAが1月末に提案した飼料規制強化案を変更(緩和)する新たな規制案を、改めてパブリック・コメントに出したと報じたが(米国FDA、BSE感染防止ルール強化を発表、なお抜け穴、実施も何時のことか,04.7.10)、関連業界はこのような案に対しても極めて消極的なことを示すものである。

 1月の案に対しても言っていたことだが、それは、政策選択の科学的根拠、それがもたらすリスクの軽減の度合いを評価し、また様々な選択のコストと便益を評価するためには、FDAは十分な時間を取らねばならないと言う。それは、97年の飼料規制はBSE拡散防止に十分な役割を果たしており、さらなる規制は無用と言わんばかりである。

 それがとくに問題にするのは、すべての動物飼料に特定危険部位とダウナーカウ(へたり牛)の利用を禁止するというFDAの提案である。NGFAは、この(産業への)影響は非常に大きく、それがどれほどリスクを軽減するものなのか、それは他の規制措置の必要性を否定することになるのかどうか、さらに関連して生じる(特定危険部位やダウナーカウの)処分やその他のコストを含む実際的・環境的帰結の完全な評価が保証されねばならないと言う。

 そして、米国農務省(USDA)は、既に特定危険部位を人間食料から排除しているのだから、議論が先延ばしされても人間の健康への悪影響はないと強調している。人間の感染防止措置が取られていれば、牛の感染は大したことがないとでも言いたいのだろうか。種の壁がないのだから、牛→牛の感染は、牛→人の感染より、はるかに容易に起こる。その防止には、人への感染防止措置以上の厳しい措置が必要なのだ。こうしてBSEが拡散すれば、結局は人の感染の危険も増大する。

 NGFAは、こうして飼料規制強化を先延ばししている間に、6月から始まったUSDAの拡張されたBSE検査が米国にはBSEがないことを確認、こういう話も立ち消えになると期待しているようだ。それは、FDAの今回の提案は、「USDAが拡張されたサーベイランスと検査プログラムを実行するための追加的時間を提供する」と歓迎するのである。61日以来、USDA1万頭を検査したが、BSE陽性のものは発見されていないと強調する。

 今後11ヵ月から17ヵ月で、ダウナーカウなど「高リスク牛」を可能なかぎり検査、年間3万頭から4万頭と推定される屠畜に出された牛で食用とすることを拒否された牛、健康に見える20万頭の高齢牛も検査する。USDAは、これで成牛100万頭に1頭のBSEも、もし存在すれば99%の信頼度で発見できると言う。だが、テキサスの検査されるべき牛が恣意的に検査を免れていたように(米国:BSE高リスク牛が検査なしでレンダリングに―産業最優先姿勢が鮮明に,04.5.7)、検査対象の選定をめぐる疑惑は消えない。これは大丈夫そうだという牛を選んで検査しているとすれば、こんな検査の信頼度は大きく削がれる。現場職員がどれほど検査に習熟しているかも気がかりだ。NGFAの期待は実現するかもしれないが、現在の検査で米国のBSE発生が正確に把握できるかどうか、しっかり検証する必要がある。

 NGFAは、反芻動物由来の動物蛋白質の継続使用を支持すると、わざわざ強調している。

 NGFA1896年設立の団体で、米国の穀物と油料種子の3分の2以上を扱う5000の施設を運営する1000の穀物・飼料・加工・輸出・その他穀物関連企業で構成される。その影響力は大きい。FDAの控え目な提案でさえ、実現は決して保証されない。