アイルランド、初のvCJD国内感染、感染源はハンバーガーの疑い

農業情報研究所(WAPIC)

04.11.13

 初の国内感染と見られるvCJD発生が確認されたアイルランドで、感染源の調査が勢力的に進められている。13日付のアイリッシュ・インデペンデント紙の報道によると(CJD 'death bug' now traced to hamburger,The Irish Independent,11.13)、保健省の調査は、肉骨粉全面禁止、特定危険部位の除去と廃棄など、感染防止策が飛躍的に強化されるまでに患者が食べた肉製品に焦点を当てている。調査官は、この20歳代初めの若者は、ハンバーガーを食べたことから感染したと確信しているという。

 先月後半に同紙が得た情報によると、彼の治療にあたる専門家は、彼が食べた肉が原因と指摘していた。輸血や手術などは早い段階で原因から除外された。この肉を特定するための作業が続けられており、農業省は輸入牛肉の可能性を示唆しているが、それがどこから来たものか、まだ確認はできていないという。

 同紙は、96年の厳格なコントロールの導入にもかかわらず、外国産の肉は違法に輸入され続けたと言う。これは確かだ。脊髄の附着した輸入肉が度々発見されてきた。その上、特定危険部位の人間食料への使用が禁止されたのは、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガルで96−97年、デンマークで00年3月、ドイツ、スペイン、ギリシャ、オーストリア、フィンランド、スウェーデンに至ってはEU共通規則で強制される00年10月まで禁止を拒否していたのだから、輸入肉に大きな嫌疑がかかるのも仕方がない。進歩党・Fine Gaelの農業関係スポークスマンは、政府は食品表示システムを水も漏らさぬものにせねばならない、「現在の表示の抜け穴は、とりわけ偽表示や外国産品を国産として通す余地があるから、アイルランド産品への消費者の信頼を損なう恐れがある」と語る。

 しかし、私見になるが、輸入肉だけに疑いをかけるのも妙に思われる。アイルランドは英国に次いで早い時期(90年)に反芻動物への肉骨粉給与を禁じたが、その後もBSEが発生し続けたことは、01年のスクリーニング検査開始と同時に大量のBSEが発見されたことで明らかだ。英国でのBSEとvCJDの関連性の確認(96年3月)を受け、牛特定臓器(現在の特定危険部位)と脊髄から取られた機械的回収ミンチ肉(ナイフで肉を切り取り、なお骨に残存附着する小量の肉を骨ごと砕いて水圧で肉だけを篩い出したもので、脊髄の混入は避けられない)の人間食料への使用を禁止したのは96年4月のことだ(飼料への使用禁止は97年2月)。飼料規制が完全になってから5年後の02年には300頭近いBSEが確認されているのだから、96年以前にはそれ以上の感染牛が特定危険部位を除去されることなく食料になった可能性がある。国産肉を疑う余地も十分にある。

 ともあれ、vCJDの感染源は英国でも特定されたことはないのだから、調査の行方は興味深い。

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