米国 国産2例目のBSEに関する調査を完了 フィードバンの有効性に慢心を強める
05.8.31
米国農務省(USDA)動植物検疫局(APHIS)と保健省食品医薬品局(FDA)が30日、6月に狂牛病(BSE)陽性の検査結果が出たテキサスの牛に関する調査を完了したと発表した。FDAは1997年のフィードバン以前に感染したと結論した。それは、1997年以来のフィードバンの有効性への慢心を強めた(http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2005/08/0336.xml)。
テキサス動物保健委員会及びテキサス飼料・肥料管理局との共同調査の結果は次のとおり。
この牛はテキサスの一牧畜場で生まれ、育てられた。それは、死亡時におよそ12歳のクリーム色のブラーマ牛雑種だった。1997年のフィードバン実施以前に生まれた。2004年に家畜市場を通して売られ、食肉処理工場に運ばれた。工場に着いたときには死亡しており、BSE検査の検体が採取されたペットフード工場に運ばれた。この工場はその製品にこの牛を使用せず、と体は2004年11月に廃棄処分された。
APHISは1990年以後にこの牧畜場から出荷されたすべての成牛と、この牛の死亡時に先立つ2年以内に生まれたすべての子を追跡した。
調査の過程で、この農場の67頭の牛(擬似患畜)をと殺、検査した。検査結果はすべてBSE陰性だった。成牛200頭はこの農場から既に出荷されていることが分かった。そのうちの143頭は既にと殺されており、2頭が生きていた(うち1頭は年齢からして擬似患畜ではないと決定され、他の1頭はBSE陰性だった)。34頭は死亡したと想定され、1頭は死んでいることが分かり、20頭は追跡不能とされた。この牛から生まれた2頭の子牛を探した。記録保存と識別に問題があり、このために、213頭の子牛を追跡せねばならなかった。そのうちの208頭は肥育とと殺の経路に入ったと確認され、4頭は肥育とと殺の経路に入ったと想定された。1頭は追跡不能とされた。
FDAとテキサス動物保健委員会及びテキサス飼料・肥料管理局による感染源調査は、感染源となりうる動物飼料中のすべての蛋白質の確認と、1997年以後に牛群を去った牛がUSDAにより擬似患畜と確認され、フィードバンを順守してレンダリングされたことの検証を主目的とした。
飼育暦調査では、1990年以後にこの農場で使用された21の飼料と飼料成分が確認された。これらの飼料成分は3つの飼料小売店から購入され、9つの飼料工場で製造されたものであった。1997年以後に使用された飼料・飼料成分は、すべて禁止された哺乳動物蛋白質を含まなかった。これにより、FDAは、この牛がフィードバン以前に感染した可能性が最も高いと結論した。
この農場の牛群の処理の調査のために、9つのと殺場と8つのレンダリング工場を訪ねた。その結果、すべてのレンダリング工場はフィードバンを順守して操業していたことが分かった。これらのレンダリング企業それぞれの検査暦の調査で、フィードバンのルールへの違反がまったくないことが分かった。
APHISとFDAは、擬似患畜が家畜に対する脅威とならなかったこと、フィードバン・ルールが順守されていることを示す調査結果に大いに満足していると言う。
ただし、同日行われた電話記者会見では、フィードバンの有効性にかかわる多くの疑問が出された。なかには、日本のプリオン専門調査会がこの点について大きな懸念をもっていることを指摘、今のフィードバンで日本の専門家や国民を納得させられるのかと問う質問もあった。答えは、日本があげる問題にはいかなる科学的根拠もないというものであり、FDAが提案しようとしているすべての動物飼料からのSRM排除でさえも、その必要性を認めないかのごとき発言もある。米国産牛BSE2例目の調査結果は、APHISとFDAの慢心を一層と強めたようだ。
記者会見における主なやりとりは次のとおり(http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2005/08/0339.xml)。
・FDAは1年半も前にフィードバンの抜け穴を塞ぐ約束をしたが、一体いつになったら約束を実行するのか、またどうやって抜け穴を塞ぐのか。
A:2004年7月にすべての動物飼料に特定危険部位(SRM)を禁止する提案を行ったが、1、2ヵ月以内に新ルールが出ると期待している。
[新ルールの中身については答えず]
[参考]米国FDA、BSE感染防止ルール強化を発表、なお抜け穴、実施も何時のことか,04.7.10、米国食品医薬局(FDA)、新BSE対策を発表―飼料規制強化,04.1.27
・USDAは今月、SRMルール違反が1000件ほどあると発表したが、これが貿易パートナーの輸入再開をためらわせることにならないか。
A:それはない。彼らは情報を求めたきた。我々は情報を提供し、どんな疑問にも答える。しかし、貿易パートナーからは何の反応もない。
・日本の食品安全委員会の一部メンバーがフィードバンの有効性を問題にしているが、わが国のフィードバンが有効だと日本国民に保証できるのか。
何の問題もない。日本については、20ヵ月以下の牛から貿易を始めるという国際ルールを超えるルールが適用される。過去14ヵ月に45万2000頭を検査して陽性は2頭だけだ。彼らが取り上げる問題にはいかなる科学的根拠もない。
「我々は、1997年以来、非常に有効なフィードバンを行っている。それは今月で8年続いたことになる。フィードバンの執行とその順守が高度であることを保証することに努力を集中してきた」。昨年は6800の検査を行い、今後さらに増やすが、99%の企業が順守している。BSE陽性のケースはフィードバン以前に汚染した飼料を食べた可能性が非常に高い。ルールが有効でないことを示すものは何もない。
・日本のプリオン専門調査会のメンバーは、米国が未だに非反芻動物に肉骨粉を与えるのを許していることを心配している。FDAはすべての動物飼料にSRMの利用を禁じると示唆しているが、それで日本が満足すると思うか。また、このルールができたとしても、実施は何年か先のことになる。
A:日本がそのような見解を採るのは、いかなる科学、世界のいかなる見解によっても正当化されない。日本とは20ヵ月以下の牛の貿易を始めることで合意している。20ヵ月以下の牛にBSEが発見された例はない [これは間違いだ。1992年に英国で20ヵ月の牛1頭に発見されている→DEFRA:http://www.defra.gov.uk/animalh/bse/statistics/bse/yng-old.html]。リスクはゼロだ。日本は科学に基づき、輸入を再開すべきときだ。
・フィードバンのルールの改訂が引き延ばされている理由は?
A:理由はいっぱいある。2004年1月には、FDAは飼料から残飯、養鶏場廃棄物(ポールトリー・リッター)、牛の血液を排除し、反芻動物肉骨粉を扱うすべての製造施設が非反芻動物用に専用化され、いかなる反芻動物飼料も製造しないように義務付けるルール変更を提案すると発表した。その1週間後、国際専門家チームが、この提案と非常に異なる勧告を行った(→米国BSE措置に関する国際専門家調査報告発表―肉骨粉全面禁止等を勧告,04.2.5)。その結果、改めてルール改正に取り組むことになった。ところが、その後の強化されたサーベイランスで米国のBSE発生率は非常に低いことが分かった。国際専門家チームの勧告は、米国のBSE発生率はもっと大きいと前提している。勧告に従う必要はなくなった。
さらに、多くの物質(SRM)を環境を汚さない方法で処分しなければならない。ルールは環境影響を最小限にし[つまり、廃棄すべきSRMの量を最小限にする]、かつBSEリスクを大きく減らすように慎重に考えねばならない。何年か前の最初のフィードバンは正しい決定だった[これはルール改正の必要性を認めないということか?]。