米国FDA 新たなBSE飼料規制を発表 なお抜け穴だらけ カナダの規制とも格差

農業情報研究所(WAPIC)

05.10.5

 米国食品医薬局(FDA)が4日、昨年1月以来予告してきた新たなBSE関連飼料規制措置を発表した。ペットフードも含むすべての動物飼料への一定の高リスク物質の利用を禁止するという。しかし、なお抜け穴だらけだ。

 FDA News:FDA Proposes Additional ''Mad Cow'' Safeguards(05.10.4)
 http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2005/new01240.html

 禁止対象物質は次のとおり。

 ・30ヵ月以上の牛の脳と脊髄、

 ・検分されず、また人間消費が許されないすべての月齢の牛の脳と脊髄、

 ・脳と脊髄が除去されなかった場合、検分されず、人間消費が許されない牛のと体全体、

 ・牛脂[タロー]が0.15%の非溶解性不純物を含む場合、この提案されたルールで禁止された物質に由来するタロー、

 ・この提案されたルールで禁止された物質に由来する機械的分離肉。

 現行の1997年飼料規制は、これら物質の反芻動物(牛と羊)飼料への使用は禁じたが、非反芻動物飼料への利用は禁止していなかった。新措置は、飼料製造、輸送の間に反芻動物飼料・飼料と非反芻動物飼料・飼料成分の交差汚染や農場における非反芻動物飼料の反芻動物への意図的または偶然の給与からくる牛の感染リスクを減らすためのものという。

 この決定は、すべての動物飼料に特定危険部位(SRM)を利用することを禁止し、また反芻動物飼料にすべての哺乳動物・家禽蛋白質の利用を禁止する昨年7月の提案 (米国FDA、BSE感染防止ルール強化を発表、なお抜け穴、実施も何時のことか,04.7.10)へのコメント、1997年規制の血液・血液製品、残飯の利用の許容の取り消し、反芻動物飼料への養鶏場廃棄物(ポールトリーリッター、チキンリッター)の利用禁止、交差汚染防止のための設備や施設の専用化義務を告げた昨年1月の提案 (米国食品医薬局(FDA)、新BSE対策を発表―飼料規制強化,04.1.27)へのコメントを考慮したものという。

 決定された措置は、これらの以前の提案から大きく後退したものだ。一部SRM(眼・扁桃・回腸遠位部など)は禁止対象とならず、血液・血液製品、残飯、チキンリッターの利用は相変わらず許され、設備・施設の専用化も義務化されない。交差汚染の可能性は大きく残る。安全よりも経済的利害を優先したとしか考えられない。

 新措置はカナダが予定している新措置に比べても劣る。カナダは、ペットフードを含むすべての動物飼料と肥料へのSRM(30ヵ月齢以上の牛の頭蓋・脳・三叉神経節・眼・扁桃・脊髄・脊髄神経節(背根神経節)とすべての月齢の牛の回腸遠位部)、SRMを含む死亡牛や人間の消費を否認された牛、死亡及び人間の消費を否認されたその他の反芻動物の使用を禁止する。レンダリング工程はSRM以外の反芻動物成分の感染性を90%減らすように設計されねばならず、施設内の生産ラインと設備は専用化されねばならない。なお不十分とはいえ、米国との大きな格差が生まれるだろう。

 しかし、日本政府は食品安全委のお墨付きを得て、そんなこととはまったく無関係に両国産牛肉・内臓の輸入再開を決めるのだろう(プリオン専門調査会 米加産牛肉のBSE汚染度は非常に低い 誰も信用しない”科学”に退場を願う,05.10.5)。これを紹介するのも時間の無駄に思えてきた。