フランスの羊に通常と異なるスクレイピー株ー正体最終確認は1年後

 農業情報研究所(WAPIC)

06.2.27

 フランス農水省によると、フランス食品衛生安全機関(AFSSA)の伝達性海綿状脳症(TSE、EST)国家基準試験所が、2頭の羊の脳から、スクレイピー(羊のTSEで、人間には伝達されないとされている)の場合に通常見られるのと異なる特徴をもつ株を分離した。そこまでは言っていないが、山羊のBSE感染に次ぐ小反芻動物(羊・山羊)の第二のBSE感染例となるかもしれない。

 この一次的検査から結論は出すことはできておらず、補完的分析が行われねばならない。検査標本とデータは英国・ウエイブリッジのEU基準試験所に送られたが、最初の補完的分析には多くの日数がかかり、最終的結果が出るのは1年ほど後になるという。

 この2頭は2000年と2002年に生まれた。2002年4月以来40万頭の羊と山羊を検査してきた小反芻動物TSEのサーベイランス計画の枠内で、食用不適動物として検査された。従って、これらの羊は食用に出回ることはなく、これらが由来する羊群全体が監視下に置かれ、隔離されているという。保健・農業・消費担当省は、AFSSAに対し、羊のTSEに関連したリスク管理の現在のメカニズムの評価を要請した。

  Le Laboratoire communautaire de référence a été saisi pour analyser des prélèvements obtenus sur deux ovins atteints d'une encéphalopathie spongiforme transmissible(2.26)
 http://www.agriculture.gouv.fr/spip/leministere.leministrelecabinet.communiquesdepresse_a5792.html

  なお、英国伝達性海綿状脳症委員会(SEAC)の羊小委員会は今日、スクレイピーとあり得るBSEに抵抗性の羊を育成する国家スクレーピー計画(NSP)の補強と非定型スクレーピーに関する現在のデータ及び動物と人間のリスクの解釈にかかわる見解を発表した。

 http://www.seac.gov.uk/pdf/positionstatement-sheep-subgroup.pdf

 それによると、ヨーロッパの小反芻動物に非定型スクレイピー発見の発見が相次いでいる。EUは2002年に加盟国小反芻動物におけるTSE(スクレーピーとあり得るBSE)の発生率を確定するためのヨーロッパ規模のサーベイランスを開始した。これにより、英国、ノルウェー、フランス、ドイツで非定型スクレイピーが発見され、現在までに他の多くの国でも羊と山羊の非定型スクレイピーのケースが報告されている。ただし、サンプリングと確認の手続は様々で、データの直接比較は必ずしもできないという。

 しかし、非定型スクレイピーがヨーロッパの羊群に比較的広範に広がっているのは確かで、英国では古典的スクレイピーに感染した羊の5万6000頭に対し、8万2000頭の感染が推定されており、広大なサーベイランスにもかかわらず発見されていない羊のBSEは、2003年のと殺場の調査データから728頭での発生が推定されるという。問題は、これら非定型スクレイピーが人間(と動物)に伝達できるかどうかだが、実験的には羊とマウスに伝達できることが分かっているものの、人間に感染できるという証拠は今までのところない。しかし、その理論的可能性は排除できないという。

 小委員会は、非定型スクレイピーの人間・動物の健康にとっての信頼できるリスク評価を行うためのデータは不十分であり、その発生率 (非定型スクレイピーの発生は増加しているのか、減っているのか。それは国の羊群のなかに多年にわたり存在したのか、それとも比較的新しいものなのか)、伝達(非定型スクレイピーがどのように伝達されるのか。羊の間で母子感染により、あるいは環境を通して自然に伝達できるのか。自然に伝達できるとすれば、一つまたは比較的少数の侵入の結果、ヨーロッパ全体に広がっているのか、そうだとすれば、拡散はどのようにして起きたのか。あるいは、それは主に飼料から拡散するのか。非定型のケースの集中発生の証拠はあるのか )、異常プリオン蛋白質と感染性の組織分布(特に特定危険部位=SRMとの関連で、異常プリオン蛋白質と感染性は様々な遺伝子型の羊にどのように分布しているのか。羊の古典的スクレイピーと実験的BSEでは、広範な組織に感染性が分布している。現在のSRMコントロールをもってしても、感染した羊は、感染した牛のおよそ1000倍の人間の健康リスクをもたらす。分布は、経口感染と脳の直接感染で違うのか )、遺伝子型による抵抗性または感受性の違い、人間と動物のリスク、NSPにかかわる厳密な研究が不可欠で、緊急を要すると言う。

 広範に広がっている非定型スクレイピーをめぐるこのような不確実性が確認され、それがもたらす人間と動物のリスクの緊急の研究が要請されているにもかかわらず、5月の国際獣疫事務局(OIE)総会には、BSE侵入リスク評価の考慮要因からBSE以外のTSEを除外することを提案している 。その妥当性がますます疑われることになる(OIE・BSEコード改正案 農水省がコメント 議論の本筋から逸れる恐れ,06.2.18)。

 関連情報
 英国、90年死亡の山羊にBSEの疑い 広がるvCJDリスク要因,05.2.9
 
フランスの山羊、BSEと正式確認,05.1.31