EU基準試験所 羊3頭の狂牛病の可能性を排除できず 欧州委が最終検査を要請

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.10

   欧州委員会が9日、英国・ウエイブリッジの共同体(EC)基準試験所(CRL)の専門家委員会が欧州委員会に対して、フランスの2頭、キプロスの1頭、計3頭の羊の脳の検査結果が一層の調査を正当化する異常な分子的特徴を示した、一部データは、検体が羊の狂牛病(BSE)ではなさそうだと示唆しているが、狂牛病であることを決定的に排除するのに十分な証拠はないと伝えたことを発表した。欧州委員会は、EUの規則に従い、さらなる調査を行うように要請した。CRL専門委員会が勧告し、欧州委員会が要請してきた次の段階の検査はマウスのバイオアセイ検査の利用を必要とし、完了までには12ヵ月から18ヵ月を要するという。

 Commission requests further investigations on three unusual cases of TSE in sheep,06.3.9

 この発表によると、検査されたフランスの2頭の羊は2000年と2002年の生まれで、農場で死んだ。キプロスの1頭は伝達性海綿状脳症(TSE)の症候が進んだ2歳の羊という。このような動物は、EUの小反芻動物(羊・山羊)のTSEサーベイランス計画ですべてを死後検査することが義務付けられている。これら3頭の最初の検査結果はTSE陽性であった。そこで狂牛病の可能性を排除するための二次検査(識別分子検査)が行われた。この二次検査が冒頭に述べたような結果を示したわけだ。このために、CRLは、EU規則に沿い、第三の最終レベルの検査(マウスバイオアセイ)を行うことになる。

 農場で飼育される小反芻動物の狂牛病は、これまでにフランスの山羊1頭に確認されている(フランスの山羊、BSEと正式確認,05.1.31)。農場の羊の狂牛病については、これはあり得ると見られてきたが、今までのところ発見されていない。欧州委員会は、それにもかかわらず、EUの狂牛病対策措置は、可能なかぎり高度の公衆衛生保護を確保するために、すべての農場反芻動物(牛、羊、山羊)に摘要されてきたと言う。

 これらの措置には、飼料への動物蛋白質(肉骨粉)の使用禁止、食品・飼料チェーンからの特定危険部位の除去、スクレイピー(羊と山羊に古くから見られ、人間には伝達されないとされてきたTSEの一種)に罹った羊・山羊群のと殺処分、TSEサーベイランス/モニタリング計画の摘要が含まれる。このサーベイランスは、1頭の山羊に狂牛病が発見された昨年以来、すべてのEU加盟国で強化された。2002年4月以来、140万頭の羊と38万頭の山羊が検査されたという。

 欧州委員会は、これら3つのケースが意味するところの理解の改善のために、加盟国と共同して現在の羊のTSEモニタリング計画を見直すことを考えているという。また、欧州食品安全機関(EFSA)は、羊に狂牛病が確認された場合に様々な羊の組織がもたらし得るリスクと、TSE抵抗性の羊の現在の育種計画に関する進行中の評価を加速するように要請されたという。

 このために、英国の伝達性海綿状脳症委員会(SEAC)も最近、非定型スクレイピーの発生率・伝達性・異常プリオン蛋白質と感染性の組織分布・遺伝子型による抵抗性または感受性の違い・人間と動物のリスク・TSE抵抗性羊育種計画などに関する広範な研究が緊急を要すると勧告している(フランスの羊に通常と異なるスクレイピー株ー正体最終確認は1年後,06.2.27)。

 なお、3頭の二次検査に関するCRL専門委員会の報告の詳細は次を参照されたい。

 The TSE community reference laboratory strain typing expert group (STEG),06.3.9

  また、欧州委員会は、この発表と同時に羊のTSEに関するQ & Aも発表しているので、この問題に関心のある方は併せて参照されたい。

 Questions and Answers on TSEs in Sheep,06.3.9