米農務省 狂牛病発生率は極度に低い サーベイランスのデータの分析で結論

農業情報研究所(WAPIC)

06.4.29

 ジョハンズ米国農務長官が28日、1994年6月以来の狂牛病(BSE)拡大サーベーランスとそれに先立つ5年間のサーベイランスのデータに基づく動植物検疫局(APHIS)の分析により、米国における狂牛病発生率は極度に低いことが科学的に根拠付けられたと発表した。分析結果は、米国における狂牛病のケースは4頭から7頭にとどまる可能性が最も高いことを示している。従って、4200万頭という成牛の数を基準とし、発生率は成牛100万頭当たり1頭以下と結論したという。

 USDA News Release:USDA RELEASES BSE PREVALENCE ESTIMATE FOR U.S.,06.4.28
  http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2006/04/0143.xml

  しかしながら、APHISの分析で気になるのは、検査対象となった牛の年齢分布や乳用・肉用の区別がまったく考慮していないことだ。サーベイランスは国際獣疫事務局(OIE)が認める基準(ポイント)を満たしているとしても、この点に配慮しない分析は信頼性を大きく損なうだろう。

 理由は次のとおりだ。

 分析対象となったデータは30ヵ月以上での牛に関するものであるとしても、それ以上の年齢区分は一切示されていない。ヨーロッパでも、日本でも、病気が発見されるケースのほとんどは5歳以上だ。例えば、旧EU15ヵ国で発見された狂牛病のケースのうち、5歳未満(59ヵ月以下)のケースの比率は、2003年:3%、2004年:5%にすぎない。米国のサーベイランスの専らの対象である”リスク牛”に限れば、この比率は、2003年:2%、2004年:4%とさらに低下する(Annual reports of Member States on BSE and Scrapie)。検査されたリスク牛の大部分が30ヵ月以上5歳未満であったとすれば、どれほどの数を検査しても、陽性となるものは発見されない可能性が高い。

 同様に、ヨーロッパや日本で発見されたケースのほとんどは乳用牛である。これは、代用乳の利用に関係している可能性が高い。同時に、検査される乳用牛のほとんどは廃用乳牛で高齢だ。米国で検査される牛のどれほどがこのような牛なのか、それもまったく分からない。米国の牛集団における乳用牛の比率は20%に足りないから、恐らく、この比率は非常に少ないだろう。農務省監査局が指摘したように、検査サンプルは無作為に収集されたものではないから、このような牛の検査は意図的に回避される恐れさえある。同局は、既に、このようなサーベイランスの結果に基づく発生率の推計は信頼できないとしていた(米農務省BSE対策監査報告 米国のサーベイランスによるBSE発生率推計は信頼できない,06.2.4;米国農務省監査局、省のBSE検査を批判 省専門家は過去のことと一蹴,04.7.15)。 APHISの分析は、このような疑問に少しも答えていない。

 APHISの分析については、Summary of Enhanced BSE Surveillance in the U.S.及びAn Estimate of the Prevalence of BSE in the U.S.を参照されたい。