カナダ生まれの牛の狂牛病7例目確認 米国のサーベイランスの有効性が疑われる

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.5

  カナダ食品検査局(CFIA)が4日、先月30日に発見された狂牛病(BSE)を疑われるマニトバの交雑種肉用牛(カナダで新たな狂牛病発生の疑い 交雑種肉用牛,06.7.1)が最終的に狂牛病と確認されたと発表した。

 BSE CONFIRMED IN MANITOBA COW,06.7.4
  http://www.inspection.gc.ca/english/corpaffr/newcom/2006/20060704e.shtml

  カナダ生まれの牛の狂牛病のケースはこれで7例目(輸入牛を含めると8例目)となる。

 この牛の出生地は未確認のようだが、1992年に作られた牛群の一部として現在の所有者により購入されたことが確認されたから、年齢は最低でも15歳という。このケースは、カナダにおけるこれまでのケースと異なり、CFIAが1991年から1992年の間に英国からの輸入牛や肉骨粉を通じて北米に形成されたとする狂牛病の時期的クラスター(第一期クラスター)に関連しているようだ。これまでに発見されたケースは、この第一期クラスターで感染した牛の特定危険部位等が飼料連鎖に入ることにより形成された第二期クラスターに関連したケースと見られている。

 Canada’s Assessment of the North American BSE Cases Diagnosed From 2003 to 2005,06.1.23
 http://www.inspection.gc.ca/english/anima/heasan/disemala/bseesb/eval2005/evale.shtml#app

 他方、新たなケースは、この第二期クラスターが生み出した地理的クラスターであるサスカチェワン州以西の地域を超える地域で発見された。このことも、従来のケースとは異なる感染源を予想させる。CFIAは、昨年米国で狂牛病が確認されたテキサスの12歳ほどの牛の感染も第一期クラスターと関連したものとしており、北米には英国からの輸入牛や肉骨粉を通して感染した牛がなお広範な地域に生存する可能性がある。 もっとも、米国で発見された狂牛病は”非定型”で、自然発生的なものかもしれないという最近の研究もあるが(非定型BSEは高齢牛に感染する自然発生的BSEかーフランス研究者,06.6.1)。

 いずれにせよ、今後の調査の結果が待たれる。CFIAは包括的な調査を行っているが、調査は、この牛の出生の前後1年以内に生まれ、同一の飼料を食べたであろう牛を見つけ出すために、出生農場の確認を最優先に進めるとしている。ただし、この牛の年齢から考えると生き残っている牛は少なく、詳細な記録などの情報も制限されているから、この調査は難航が予想されるという。

 CFIAは、この発見にもかかわらず、人間の消費のためにと殺されるすべての牛から特定危険部位が除去されているから、カナダ産牛肉の安全性は保証されているとし、さらに、この発見は、現在のカナダのサーベイランスプログラムの有効性を実証するものと強調する。2003年に最初のケースが発見されて以来11万5000頭を検査しており、カナダ産牛群における狂牛病発生率は非常に低いと確信していると言う。 

 発生率が「非常に低い」かどうかは別として、少なくともカナダのサーベイランスが米国よりも有効に機能していることは確かであろう。発生州に隣接し、牛も飼料も自由に国境を越える米国北部ではまったく発生が見られないのは不自然だ。米国のサーベイランスの有効性が疑われる。

カナダ生まれの牛の狂牛病確認例

 

確認年月

発生地域(出生地域)

畜種

年齢または出生年

1 2003.05

サスカチェワン州のアルバータ州隣接地域

アンガス

8歳

2 2003.12 米国ワシントン州(アルバータ州) ホルスタイン

1997年

3 2005.01  アルバータ州 ホルスタイン

1996年

4 2005.01 アルバータ州 肉用牛・シャロレー

1998年

5 2006.01 アルバータ州 交雑種

6歳

6 2006.04 ブリティッシュ・コロンビア州 乳牛

6歳

7 2006.07 マニトバ州 交雑種

15歳

(このほか、1993年にアルバータ州で英国からの輸入牛に狂牛病が確認されている)