カナダ 50ヵ月齢の乳牛の狂牛病確認 米国も感染源調査に加わる

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.14

  カナダ食品検査局(CFIA)が13日、アルバータの50ヵ月齢の乳牛の狂牛病(BSE)を確認したと発表した。

 CFIA News Release:ALBERTA COW TESTS POSITIVE FOR BSE,06.7.13
  http://www.inspection.gc.ca/english/corpaffr/newcom/2006/20060713e.shtml

 出生農場は突き止め、この牛の出生の前後12ヵ月以内にここで生まれた他の牛を追跡している。年齢から考えると、この牛は1997年のフィードバン実施以後に狂牛病に暴露された。年齢とともに、狂牛病が報告された大部分の国の経験からしてもそう考えられる 。しかし、この牛がどのようにして狂牛病に暴露されたのか、あらゆる可能性を考慮して、「アメリカ」の動物衛生当局者も招請して調査を進めるという。

 この確認により、カナダでは7例の狂牛病が確認されたことになる。米国ワシントン州で発見されたアルバータ生まれの牛も加えると8例となる。そして、1995年7月から今までのほぼ1年間に検査した約56,000頭のリスク牛のなかから4頭の感染牛が発見されたことになる(カナダ 新たな狂牛病の疑い カナダ産牛のリスク再評価が必要ではないのか,06.7.11)。

 そうすると、約5万3000頭のリスク牛を検査した2頭の感染牛を発見した2004年1月から2005年6月21日までのサーベイランスの結果に基づき、カナダの100万頭当たり狂牛病汚染頭数は「日本と同等」とした食品安全委員会の生体牛リスク評価は、評価方法をまったく同じとして「日本の約2倍」と修正せねばならないことになる。

  新たな狂牛病確認は、米国当局者にもカナダの狂牛病対策、特にフィードバンの有効性の見直しを迫ったようだ。この確認を受け、米国農務省(USDA)のジョハンズ長官は、この牛がフィードバン実施後およそ4年半も後に生まれた牛であることは米国とカナダの動物と人間の衛生保護システムに関する答えねばならない問題を提起する、このケースにかかわる状況すべての完全な理解が必要であり、特にこの牛がどのようにして狂牛病感染物質に暴露されたかに関連したこのケースの調査に参加するUSDA専門家を派遣するという声明を 訪問先のモンゴル・ウランバートルから発表した。

 STATEMENT BY AGRICULTURE SECRETARY MIKE JOHANNS REGARDING CANADA'S SEVENTH CASE OF BSE, FROM ULAN BATOR, MONGOLIA,6.13
 http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2006/07/0249.xml

  しかし、この見直しは米国自身も必要ではないのか。カナダで立て続けに4つのケースが発見されながら、牛や飼料の貿易に関して国境がないも同然で、かつフィードバンの有効性もカナダと同等か劣ると見られる米国で発見されない方が不自然だ。それは、米国のサーベイランスが無効であることの結果にすぎないのではないのか。

 CFIAは、この確認発表で、CFIAとカナダの州・産業は狂牛病に関する啓発を促進、狂牛病を疑われるケースの報告を奨励するために協力してきたと述べる。今年に入って4件の発見は、このような協力が実を結びつつあることを示すと言えよう。米国で発見されないのは、このような協力がなく、USDA監査局も指摘するような恣意的な検査サンプル収集が続いているからではないのか(米農務省BSE対策監査報告 米国のサーベイランスによるBSE発生率推計は信頼できない,06.2.4;米国農務省監査局、省のBSE検査を批判 省専門家は過去のことと一蹴,04.7.15)。カナダ並みのサーベイランスがあれば、フィードバンの狂牛病は次々と発見されるかもしれない。カナダの動物・人間保護システムの有効性を疑う前に、自国のシステムの有効性を疑うべきであろう。

カナダ生まれの牛の狂牛病確認例

 

確認年月

発生地域(出生地域)

畜種

年齢または出生年

1 2003.05

サスカチェワン州のアルバータ州隣接地域

アンガス

8歳

2 2003.12 米国ワシントン州(アルバータ州) ホルスタイン

1997年

3 2005.01  アルバータ州 ホルスタイン

1996年

4 2005.01 アルバータ州 肉用牛・シャロレー

1998年

5 2006.01 アルバータ州 交雑種

6歳

6 2006.04 ブリティッシュ・コロンビア州 乳牛

6歳

7 2006.07 マニトバ州 交雑種

15歳

8 2006.07 アルバータ州 乳牛

50ヵ月齢

(このほか、1993年にアルバータ州で英国からの輸入牛に狂牛病が確認されている)