鹿慢性消耗病 唾液を通して容易に拡散 血液でも伝播ー米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.10.10

 米国研究チームが、BSE等伝達性海綿状脳症(いわゆるプリオン病)の一種である鹿慢性消耗病(CWD)が唾液や血液を通じて伝播することを明らかにした。

 これらの病気が病原体が存在する可能性のある体液を通じて広がるのではないかという重大な懸念があるが、これまでのところ確証はない。研究者は、この問題を解明するために、健康な鹿をCWDで死んだと分かっているコロラドの野生の鹿から採取した唾液、血液、尿、糞に曝した。

 テーブルスプーン3杯分の唾液を経口で与えた鹿はすべてCWDになった。血液を1回だけ輸血した鹿もCWDになった。これで、CWDが容易に伝播することが説明できる。唾液による汚染は鹿の生息地域のどこでも、さらに鹿が出入りする牧場でも、常に起き得る。根絶はほとんど不可能だろう。

 研究者は、人の鹿の体液との接触にも強く警告する。CWDが存在する州のハンターは、鹿の取り扱いにはよほど用心せねばならないだろう。

 [これはCWDだけに限られるのだろうか?新たな疑問も湧く]

 この研究は最新のScience誌に発表された。

 Edward A. Hoover et al.,Infectious Prions in the Saliva and Blood of Deer with Chronic Wasting Disease,Science 6 October 2006:Vol. 314. no. 5796, pp. 133 - 136;DOI: 10.1126/science.1132661
  Abstract:http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/314/5796/133?etoc

 関連情報
 慢性消耗病のシカの筋肉に異常プリオン蛋白質が存在する恐れー米国の新研究,06.1.27
 鹿の慢性消耗病(CWD)の感染経路は圧倒的に水平感染―新研究,03.9.8