米国 家畜識別・追跡システムへの義務的参加は廃案へ

農業情報研究所(WAPIC)

06.12.13

  ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、米国農務省(USDA)が2009年完成を予定している家畜識別・追跡システムへの参加を義務化する方針を農民の激しい抵抗で取り下げた。参加は任意となり、USDAは、今や、さらなる参加は財政的刺激策と市場の圧力次第と言っている。

 農民の抵抗の最大の理由としては、コスト、政府によるプライバシー侵害の恐れ、動物に電子タグを埋め込む技術に対する宗教的禁忌とそれによって誰が利益を得るかの問題だという。ニューヨークの小農民グループは、これを小農民を締め出す”詐欺”と呼び、「動物識別システム推進の唯一の理由は、大規模ミートパッカーとシステムに不可欠な技術を売る人たちの経済的利益に奉仕することだ」と言う。また、ウィスコンシンの一農民は「識別システムに反対する宗教的信念がある」と言う。

  Plan for Tracking Animals Meets FarmersResistance,NY,12.13

 牛の月齢識別も永遠に歯型と肉質に頼ることになりそうだ。しかし、義務的システムが導入されたとしても、頼りにならないかもしれない。牛泥棒は頻々と起きるような国では(米国 1世紀前の犯罪・牛泥棒が完全復活 牛肉価格上昇に直接影響,06.10.31)、こんなシステムは機能しないだろう。 骨抜きBSE飼料規制強化もいつになるかわからない(米FDA 死亡牛の脳・脊髄の飼料利用禁止案を撤回へ 経済コストが高すぎる,06.9.13)。この国と付き合うのは本当に大変だ。