米農務省 と畜牛民間BSE検査禁止は違法の判決に控訴 検査実施を寸前で阻止

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.30

  米国農務省(USDA)が5月29日、クリークストーン・ファームズ・プレミアム・ビーフ社のBSE全頭検査 のUSDAによる禁止を違法とする連邦地裁判決を不服として控訴することを明らかにした。これにより、6月から始まるはずであった同社の全頭検査は当分延期されることとなった。

 U.S. on mad cow: Don't test all cattle,USA Today,5.29(by AP)
 http://www.usatoday.com/news/washington/2007-05-29-mad-cow_N.htm 

 USDAは、科学的健全性を保証できないマーケッティング目的のための民間検査は内外消費者の米国産牛肉への不信を煽ると、頑として民間BSE検査を禁じてきた。しかし、今年3月29日、クリークストーン社の訴えを受けたコロンビア連邦地裁のジェームズ・ロバートソン判事は、国は診断テスト一般の利用を規制する権限は持つとしても、BSE感染のレベルを調べるために既に死んだ牛に利用される[政府が使うのと同じ]BSE検査キットの民間利用を禁止する権限はないという決定を下した。 判事は、多くの国がと畜の際に健康に見える多数の牛を検査しており、その結果を消費者がどう受け止めようが国の責任にかかわることではないとも述べていた。ただし、政府はこの判決に対して6月1日まで控訴できるとしていた。

 Creekstone Farms Premium Beef is ready to work with USDA to further enhance the value of U.S. beef with voluntary BSE testing,07.3/29
  http://www.3buddies.com/creekstone/news-bse-3-07.html
 Federal judge rules Creekstone can test for BSE,High Plains Journal,07.3.29
  http://www.hpj.com/archives/2007/apr07/apr9/FederaljudgerulesCreekstone.cfm

 こうして、控訴さえなければ6月からクリークストーン社の全頭検査が始まるはずだったが、USDAは寸前でこれを阻止したわけだ。少なくとも控訴審の結果が出るまで、検査実施は延期されることになる。

 一中堅ミートパッカーが全頭検査するかしないかなど、米国産牛肉の安全性や米国のBSE汚染度の判定にほとんど影響がない。我々にとっては、こんな「喧嘩や訴訟」は「つまらないからやめろ」となどとお節介を言う気も起きないほどにつまらない。しかし、USDAがこうまで意地に張るのを見ると、それは、新たなBSEの発見を防ぐために全力を尽くすことこそがわが使命と 心得ているのではないかと勘ぐりたくなる。これはサーベイランスにおける検体の作為的採集や不適切な検査方法・手続の採用によっても裏づけられよう(米農務省BSE対策監査報告 米国のサーベイランスによるBSE発生率推計は信頼できない,06.2.4;米国産牛肉の安全性 米国のBSEサーベイランスのあり方が目下の焦点,06.2.8)。