EU 背骨をBSE特定危険部位とする牛の月齢を30ヵ月に引き上げ

農業情報研究所(WAPIC)

08.4.23

  欧州委員会が4月22日、脊柱(背骨)が特定危険部位(SRM)として牛肉から除去されねばならない牛の月齢を24ヵ月から30ヵ月に引き上げる規則を採択した。2005年7月に発表された狂牛病(BSE)措置改変に向けてのロードマップ(欧州委、EUの狂牛病措置改変に向けてのロードマップを採択,05.7.18)に沿うものという。2005年10月の12ヵ月から24ヵ月への引き上げ(EU SRM・脊椎を除去すべき牛の月齢引き上げへ Tボーンステーキも食卓に戻る,05.10.6)に続く措置となる。

 http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/08/624&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

 引き上げを正当化する根拠は、2007年4月の欧州食品安全機関(EFSA)の意見*だという。この意見は、最新の実験結果とEU諸国におけるBSE発生状況やBSE防止対策を考慮、感染牛中枢神経組織の感染性は潜伏期の4分の3が過ぎたときから現われることを前提に、感染性は33ヵ月齢の牛では発見されないか、存在しないとしていた。

 欧州委員会は、この意見が「33ヵ月までが安全限界と考えられる」と述べていると言うが、実際には、上記のとおり、「感染性は33ヵ月齢の牛では発見されないか、まだ不在であると予測できる」としていただけである。その上、実際には2000年以後に生まれた33ヵ月より若い牛の感染が1例だけとはいえ発見されていることや、異常プリオン蛋白質が発見されないことが組織に感染性がないことを保証するものではないという問題もあることを指摘しており、33ヵ月までなら安全と言っているわけではない。

 *http://www.efsa.europa.eu/EFSA/Scientific_Opinion/biohaz_op_ej476_srm_en.pdf

 欧州委員会は、30ヵ月を最も実際的で、余裕をみた安全限界として提案した、これにより、農業者と食肉産業の競争力が強化され、EUで生み出されるSRM廃棄物の量が減り、処分のコストも減ると言う。本音は後者の方にありそうだ。

 ただし、EUにおけるBSE発生が極度に減っていることは確かである。感染が疑われる牛、30ヵ月以上の全屠畜牛、24ヵ月以上の全リスク牛(死亡牛、緊急屠殺牛など)の検査でBSE陽性となった牛は、2001年の2167頭(検査された牛1000頭につき2.55頭)から2007年(12月11日まで)の119頭(0.02頭)にまで減った。2006年、47ヵ月齢以下の牛のBSEは1件も発見されていない。

 Report on the monitoring and testing of ruminants for the presence of Transmissible Spongiform Encephalopathy (TSE) in the EU in 2006.
 http://ec.europa.eu/food/food/biosafety/bse/annual_report_tse2006_en.pdf
 BSE testing in 2007
 http://ec.europa.eu/food/food/biosafety/bse/mthly_reps_bse2007_en.pdf

 EUの新措置が正当性を持つとしても、BSE防止措置の有効性や発生状況が不明な他の国で正当性を持つわけでないことは言うまでもない。欧州委員会は、今回の措置でEU規則も国際獣疫事務局(OIE)の基準に沿うものになったと言うが、これはOIE基準が世界のどこでも妥当になったことを意味するわけではない。