米国牛肉産業 韓国向け輸出牛肉の月齢政府検証を要請 安全だが消費者が大事

農業情報研究所(WAPIC)

08.6.21

  米国食肉輸出協会(USMEF)、アメリカ食肉協会(AMI)、ナショナル食肉協会(NMA)の米国牛肉産業を代表する3団体が6月20日、シェーファー農務長官とシュワブ通商代表に対し、韓国国民の不安が収まるまで、韓国に輸出される牛肉・牛肉製品が由来する牛が30ヵ月未満であることを検証するシステムを米国政府が設置するように要請する書簡を送った。

  http://www.usmef.org/TradeLibrary/News08_0620a.asp

  これは、米国産牛肉の輸入に関する韓米の追加交渉が終わった20日(韓米牛肉交渉が事実上妥結、報告・協議後に発表  聨合ニュース 6.20)、韓国輸入肉協議会(仮称)が月齢30ヵ月以上の米国産牛肉は輸入しないと決議した(国内業界が声明「30カ月未満の米牛肉だけ輸入」  聨合ニュース 6.20)ことに応えるものという。

 韓米追加交渉の結果の詳細はなお不明だ。ただ、韓国世論が受け入れるまで、何らかの方法で韓国市場に30ヵ月齢以上の牛の米国産牛肉・牛肉製品が入らないにすることで合意したことだけは確かなようだ。しかし、業界の自主的協定だけでは確実な実施は保証されず、韓国世論は収まらないだろう。韓国業界は、「米国の輸出業者が30ヵ月未満の牛肉だけを輸出するという点を確実にするには米政府としての保証が切実だ」とした。米国業界の政府に対する要請は、これに応えたものだ。

 米国3団体の書簡は、「韓国輸入牛肉団体は、輸入業者は30ヵ月齢以上の牛からの米国牛肉は安全と信じるけれども、現在の市場条件に対応する過渡的措置として、30ヵ月齢未満の牛からの米国牛肉だけを輸入すると宣言する声明を発表した。この声明は、米国輸出業者が米国政府に対し、韓国に輸出される米国牛肉が輸入業者のこの要求を満たすことを検証するように求めている」とする。

 そのうえで、米国牛肉産業は米国産のすべての牛肉が安全だと確信しているが、消費者の不安に応えるという韓国輸入業者の要請で、OIE(国際獣疫事務局)のガイドラインに従う完全な市場開放までの過渡的措置として、米国農務省(USDA)による検証プログラムの下で、韓国への輸出を30ヵ月齢未満の牛からの製品に限る用意があると書く。

 書簡の最後に言われているように、米国牛肉産業も、「市場、消費者の要求、消費者選択の原則を尊重し、これに応える」ほかないということだ。 


 しかし、政府としてはそうはいかない。 政府が輸出条件を遵守させる義務を負う今までの輸出証明プログラムとは異なるとはいえ、政府関与するかぎり、米国産牛肉は30ヵ月齢以上の牛からのものでも安全という政府の主張に傷が付く。日本の輸入条件緩和をめぐる交渉でも、全面開放など言いにくくなる。

 同時に、これで韓国国民が納得するとは限らない。韓米協定では飼料規制強化が30ヵ月以上の牛からの肉や肉製品の輸入を許す条件とされており(韓米牛肉貿易交渉 月齢制限残るも、韓国は安全軽視の大冒険 脳、精髄も禁止解く,08.4.19)、なお抜け穴だらけの強化飼料規制が実施されるのも来年の4月23日以後だというのに(米国 BSE飼料規制強化へ それでもなお抜け穴だらけ,08.4.24)、30ヵ月齢以上の牛の肉・肉製品がすぐにも輸入されるかのような前提で”追加交渉”が行われたこと自体も不可解だ。

 ともあれ、韓国国民のお陰で、日本の輸入条件緩和にかかわる交渉は、当分始まりそうもない。