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EU:回収農薬物質に110を追加、実行に不安

農業情報研究所WAPIC)

03.7.9

 欧州委員会は、7月8日、昨年7月に今年7月までにに回収しなければならないとされた320の植物保護製品(PPPs−殺虫剤・殺菌剤・除草剤を含む)に加え、さらに110の物質を今年12月までに回収しなければならないと発表した(Commission close to completion of pesticide review: 110 additional substances to be withdrawn,03.7.8)。前回発表の320の物質に今回の110の物質、個別に評価されてきたおよそ20の物質を加えた約450種の物質が消えることになる。これは、1993年に販売されていたものの半分ほどに相当する。2008年末には、企業が安全性を再評価し・販売の継続を求める残る物質すべてについて、市場から撤去するかどうかの決定を下す予定である(このような措置のバック・グラウンドについては、既報のEU:2003年に320の農薬使用物質を撤去(02.7.8)を参照されたい)。

 しかし、このような大掛りな作業がどこまで実行できるのか、大変な不安がある。欧州委員会は、利用できないこれら製品が放置されるのを防ぐために、使用者・卸売業者・小売業者は自分が使い・販売している製品がこれら物質に相当するかどうか知らねばならないと言う。また、関係者は、特定製品が認可されたものかどうかチェックするために、各国の当局にコンタクトを取るべきだとしている。しかし、各国の多くの地方当局はまったく準備ができていないし、このような指令の存在さえ知らないようだ。

 7月8日付の”ガーディアン”紙(Chaos feared over chemical ban,Guardian,03.7.8)が伝えるところによると、現在販売されている80種の家庭園芸用殺虫剤・除草剤が二週間以内に地方当局によって処分されねばならないのに、大部分の地方当局がこの責任を知らないという。

 Asda、B&Q、Boots、Do-it-All、Homebase,Woolwortsなどの自己ブランド名で販売される芝用製品は7月24日から禁止される。クリスマスからは、納屋に保管されている化学物質を持つ園芸家に禁止が拡張される。1月1日からは、ジクロルプロップ、トリフォリンなどの成分を含む製品の使用が不法となり、地方当局に有毒廃棄物として引き渡さねばならない。しかし、ガーディアン紙が接触した様々な地方部局のほとんどはそんな責任があるとは自覚していないという。禁止農薬製造者が構成する作物保護協会(CPA)は廃物の山ができると警告している。小売業者には知らせてきたが、接触した24の地方当局のどれ一つ指令に対する準備ができておらず、大部分は指令の存在さえ知らなかった。

 人々と環境を護るためのEU指令、このままでは逆効果になりかねない。