砒素防腐処理木材、子供の発癌リスクへの懸念が高まる―米国EPA新研究

農業情報研究所(WAPIC)

03.11.14

 米国環境保護庁(EPA)の新研究が、砒素で防腐処理された木材に繰り返し曝される子供の発癌リスクは以前考えられていたよりも大きいことを明かにした。EPAは昨年、砒素ベースの防腐剤を注入した木材の使用を2年間で(2003年末までに)段階的に排除することで木材化学企業・住宅改良産業と合意した。この木材は、国中の住宅やレクレーション施設でフェンス・デッキ・遊歩道・ピクニック・テーブルなどに使われているが、砒素はよく知られた発ガン性物質であることからこのような合意に至った。

 新研究は、このときの考えられた以上に子供のリスクが大きいことを示唆している。新たな知見では、この木材に繰り返し曝される子供の90%に、100万人に一人というEPAの有毒化学物質の影響を判断する基準を上回る癌のリスクがある。子供が外で遊ぶ時間が長くなる南部諸州の気候の温暖化で、問題が一層大きくなる恐れがある。すべての子供の10%は一般人口中の子供より100倍高い癌のリスクに直面する。

 EPAは、デッキや遊具で遊ぶ子供のリスクは少しばかり大きくなるかもしれないが、その程度について確定的なことを言うのは時期尚早、一層の研究の必要性がある、来月、EPAの科学諮問委員会(SPA)に諮るという。しかし、この評価は公衆に深刻なリスクはないとした保証した昨年の評価とは明かに異なる。昨年、EPAは住宅以外で使われているCCA注入木材に大きなリスクはないとし、既存の施設や周辺土壌の除去や置換は勧告していない。外で遊ぶ子供は食事前に手を洗うこと、CCA注入木材の焼却はしないこと(有毒化学物質の放出につながる)、これらの木材を扱う者は防塵マスク・ゴーグル・手袋を着用し、作業着は他の衣類と別に選択することなど、細かな注意を促すにとどめた。住宅裏庭や運動施設などには、このような木材が残ったままである。

 わが国でも、CCAの防腐性能は極めて優秀、防蟻性能も優秀として、広く利用されている。CCA処理木材に直接人が接触しても人体に移行するCCAの成分の量は極めて微量で、安全性に問題のないとされている。廃棄する場合はみだりに焼却してはならない、製品の端材・のこ屑等を焚き火や暖房等に使用してはならないといった注意があるだけである。

 参照
 EPA:A Probabilistic Risk Assessment for Children Who Contact CCA-Treated Playsets and Decks ( Draft Preliminary Report) (3.5 Mb PDF)(11.10);Questions & Answers(11.13)

 関連情報
 米国:砒素入り防腐剤(CCA)注入木材を2年間で段階的に排除(02.2.13)

農業情報研究所(WAPIC)

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