フランス司法官、フィプロニル製品(殺虫剤)の販売停止を命じる

農業情報研究所(WAPIC)

04.2.20

  フランス・オート・ガロンヌ県セント・ゴーデンの司法官は17日、フィプロニルを活性成分とする殺虫剤・レジャント(Régent)を製造するBASF社を審問、司法上の統制下に置いた。この製品は農業により広く利用され、蜜蜂の大量死を招いていると疑われてきたうえに、最近の研究は人間の健康リスクも指摘しているものだ。司法官は、02年春にフランス南西部の養蜂場で起きた蜜蜂の大量死の原因について同社を審問、蜜蜂に致死的影響を与えると疑われるこの種子被覆殺虫剤の販売停止を命じたものである。同時に、やはり蜜蜂の大量死に関係していると養蜂農家が告発してきたイミタクロプリドを活性成分とするゴーショ(Gaucho)を製造・販売するドイツ・バイエル者も審問を受けた。

 これらの製品は、94年に大量の蜜蜂の死が確認されるようになって以来、蜂蜜生産者が告発してきたものだ。これらは播種により土壌に入ると活性成分を植物の生長に応じて放出、害虫の攻撃から植物を護る。しかし、高濃度の毒性物質は開花期には消滅するとされている。しかし、養蜂農家が支援する多くの研究により、これらの物質の分子は花、とくに蜜蜂が集まるヒマワリの花にも検出されることが確認された。こうして、蜂の大量死を生んでいる疑いが濃厚になっていた。だが、製造者は、ゴーショ・レジャントの施用区と無施用区の比較研究に基づき、これら物質は無害と主張してきた。

 この司法官(判事)は、オート・ガロンヌ県とジェール県の養蜂業者の訴えを受け、「他人の財産破壊」という罪状で02年春に最初の調査に踏み出した。その結果、不適切な農業慣行を疑われることになった。しかし、03年春、フィプロニルの急性毒性を指摘する研究が出て、事態は急変した。調査が積み重ねられ、問題は、他人の財産の破壊の域を脱した。

 研究は、人間のリスクにも及んだ。成分は家畜が食べるサイレージにも検出され、家畜の脂肪と乳に蓄積されて食物連鎖を汚染することが明かにされた。昨年4月には、ミディ・ピレネーで播種の際に採取された空気から成分が検出され、12月には、国立科学研究センター(CNRS)の研究者が、フィプロニルの大気中の存在は蜂を殺すだけでなく、人間にもリスクがあると結論した。1月に判事に提出されたボルドー大学の専門家の報告は、製品は実際の毒性よりも毒性は低い種類に分類されていると推論している。保健省の不適切な対応が問題にされたわけだが、農業省食料総局も、直接曝されても、植物・動物の消費を通じても、人間の健康にはいかなる危険もないと主張していた。

 しかし、02年、03年に行われた両社の家宅捜査で、製品認可の手続に関する疑いが浮上した。レジャントは、96年の商品化以来、暫定販売許可しか受けていなかった。この許可は、最終許可に必要な毒性調査委員会の意見を待たずに与えられていた。いまや、農業省の責任が問われる事態となっている。ゲマール農相は、2月16日なって、BASFにフィプロニルに関する弁明を命じたが、今季の種子被覆は既に始まっている。安全を強調しながら生産者重視の態度を一向に変えないのは、どこの国の農業省も似たようなものだ。

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