フィプロニル等殺虫剤論争が激化、バイエル社労組は「工業的」養蜂批判

農業情報研究所(WAPIC)

04.3.1

 フィプロニルを活性成分とする殺虫剤・レジャントの販売停止とイミダクロプリドを活性成分とする殺虫剤・ゴーショの販売停止を睨んだ調査を命じた先月のフランス農相の決定をめぐる争いが激化している。農相の決定にもかかわらず、論議は複雑化、農業・養蜂(植物・動物生産)のあり方にも及ぶ様相を呈してきた。

 26日には、レジャントで被覆された在庫種子の今季の使用を許したことに反発するジョゼ・ボベ等農民同盟の活動家が省の食料総局事務室を占拠、レジャントに関する「秘密」書類を発見したと発表したが、食料総局はこれらは秘密でもなんでもない、農民同盟は故意に事を荒立てていると批判している。

 27日には、植物のみならず、動物と人間の健康の保護にも責任を果たしていると主張する小麦・穀物生産者協会・トウモロコシ生産者協会・油料種子・蛋白作物生産者連盟が、種子被覆技術は過去の農薬よりはるかに少ない量の使用で植物保護を可能にする、これが停止されれば大量の散布に逆戻りすることになり、消費者や環境への悪影響を強める結果になると、農相決定に反論する共同声明を出した(→Une protection raisonnée des cultures vitale pour les productions végétales,Agrisalon,2.27)。

 同日、ゴーショを製造するバイエル・クロップ・サイエンス社の労組が、蜜蜂の高死亡率を引き起こした養蜂業者の「悪しき養蜂慣行」に攻撃の鉾先を向けた。その声明は、レジャントが使用されない地域で蜜蜂が死んでいるだけでなく、レジャントやゴーショがよく使われるスイスやイタリアでは蜜蜂は健康だと指摘する。それによれば、およそ7万の業者を数える理性的で環境を尊重する伝統的養蜂が、遺伝子操作、アジア・アフリカ・南米の蜜蜂の輸入といったあらゆる手段を使って収量増加を追求する工業的養蜂(およそ3千の業者)との競争の激化に直面している。低級のヒマワリやナタネの蜂蜜を大量に製造するこの「集約的で生産性至上主義的」養蜂が、これら製品を蜜蜂に有毒だと証拠もなく批難している、これら養蜂業者は、蜜蜂の高死亡率が過度の移動を強いられる蜜蜂のストレスと飢餓に関連していないか自問すべきだという(→Les syndicats de la firme Bayer dénoncent les "mauvaises pratiques apicoles",Agrisalon,2.27)。

 「集約的で生産性至上主義的」な植物・動物生産は、まさに農民同盟が攻撃の鉾先を向ける対象だ。農民同盟が求める植物・動物生産の姿は、ますます多くのフランス人に支持されるようになってきた。2月26-27日に行われた1,018人の18歳以上のフランス人に対する電話世論調査では、誰が農業者の利益を最もよく守るかの問いに、51%がジョゼ・ボベと答えている。この比率は、1年前より7%も増えた。ゲマール農相も10%から15%に増えたが、シラク大統領は10%で横ばい、ラファラン首相、農業経営者連盟(FNSEA)会長は、それぞれ9%から5%、10%から9%へと支持が減った(→Sondage - Pour les Français, José Bové reste le meilleur défenseur des agriculteurs,Agrisalon,2.28)。

 これを逆手に取ったバイエル社労組のこの指摘は非常に興味あるものだ。だが、小麦・穀物生産者協会等やバイエル社労組が、これまで「集約的で生産性至上主義的」植物・動物生産の熱心な批判者であったとは聞かないし、実際、「農民的」農業の支持者でもなかった。突如の消費者・環境保護の強調、集約的生産の批判は、二つの殺虫剤の危機を回避するための戦術の色彩が濃厚である。それにもかかわらず、論争の決着のために考慮すべき要因が増えたことは確かと言えそうである。

 関連情報
 フランス食品衛生安全庁、殺虫剤・ゴーショの蜜蜂への影響の暫定研究結果を発表,04.2.27
 フランス、フィプロニル殺虫剤を販売停止に,04.2.24