WWF トナカイの肉さえ有毒化学物質で汚染 強力な化学物質規制を要求

 農業情報研究所(WAPIC)

06.9.23

  世界野生動物基金(WWF)の調査が、ヨーロッパで販売されているあらゆる食品に相当量の有毒人造化学物質が含まれていることを発見した。

 WWF;Chain Of Contamination: The Food Link,2006.9
 http://www.wwf.org.uk/filelibrary/pdf/contamination.pdf

 WWFは過去5年にわたる調査で検査された352人の血液のすべてが有毒化学物質に汚染されていることを発見しているが、今回の発見は、大気と並ぶ有力な汚染ルートの一つが普通に食べている食品であることを示す。もはや、人々がこれらへの暴露から逃れる術はないようだ。

 参照:EU委員・ヴァルストレムの血液検査、化学物質人体蓄積を実証,03.11.7;欧州議会 壮大な化学物質規制法を承認 化学物質との全面的戦いの第一歩,05.11.18

 WWFは、EU7ヵ国における27品目の食料品に含まれる8種類の人造化学物質ー有機塩素系殺虫剤、PCB、臭素系難燃剤、過フッ素化化合物、フタレート、有機スズ化合物、アルキルフェノール類、合成麝香ーを調査した。調査品目には、フィンランドのトナカイの肉・ソーセージ、イギリスの黒パン・バター・フィッシュフィンガー、イタリアのサラミ、スペインのハム、ギリシャの牛肉など、各国を代表する食料品も含まれる。

 最も有害な物質は魚に発見された。最も有毒性の高い食料品はスウェーデンのニシン保存品だった。しかし、調査された品目のすべてに人造化学物質が発見された。難燃性化学物質が肉やチーズに発見され、魚や肉にDDTも発見された。最も原生的な自然が残るフィンランド・ラップランドのトナカイの肉にさえ、PCBや殺虫剤が検出された。

 報告は、これら食品を食べることで直ちに健康問題が起きるわけではないが、いつも食べていれば長期的影響が懸念されると言う。例えば、DDTは肝臓や腎臓に蓄積される。調査された一部物質は人間のホルモンに似ており、肥満や様々なタイプの癌、糖尿病のリスクが増える恐れがあるという。

 EUは、化学物質から人々と野生動物を護るための化学物質規制法(REACH)を策定中である。しかし、域内や米国・日本などの域外化学産業の猛烈な圧力活動で、欧州委員会の当初案から後退を余儀なくされており、実効は大きく削がれそうだ。WWFは、現在のバージョンでは人々と野生動物を保護するという目標は達成できないと警告、ホルモン撹乱物質を含む高度に危険な物質は、利用可能な物質がある場合にはすべてより安全な代替物質に置き替えるべきだと言う。