フランス農業共済 パーキンソン病と農薬への職業的暴露の関係の究明へ

農業情報研究所(WAPIC)

06.10.19

  フランス農業共済組合(MSA)が17日、パーキンソン病発生における農薬への職業的暴露の役割に関する全国規模の疫学調査を11月に開始すると発表した。この研究は国立保健医学研究所(INSERM)などが実施する。この5月、シェール県の社会保障問題裁判所が一農業経営労働者のパーキンソン病を初めて職業病と認めた。INSERMの専門家は、この病気の発生における農薬への暴露の役割は仮説として大いにありそうだが、なお解明が必要だ、様々な研究が農業者におけるリスクの増加を示してきたが、それがまさに農薬が原因であることを証明せねばならないと言う。

  Une enquête sur l'exposition professionnelle aux pesticides,Le Monde,10.18
   http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3228,36-824790@51-824894,0.html

   この立証は複雑な作業になる。高齢者から、20年から30年前に使った農薬やそれをどれほどの期間使ったかなどに関する情報を集めねばならない。他のリスク要因を排除したうえで、どの農薬が原因かも確定せねばならない。しかし、1991年と2001年にMSA とINSERMが行った症例対照研究では、15年間農薬に曝された人のリスクが1.9%高いことが分かった。このリスクの増加は、受動喫煙による癌のリスクの増加に比肩するという。

 新たな研究は、利用した農薬と利用期間・方法を調査しつつ、MSA加入者の間でのパーキンソン病発生の頻度を監視する。結果が出るのは何年も先になる。

 MSAは、2005年に農業活動と癌の関連に関する調査を始めており、これには11万5000人が参加している。最初の結果は2008年に出ることになっているという。

 パーキンソン病と毒性・残留性が高い除草剤・パラコートの関連は早くから疑われてきた。いくつかのヨーロッパ諸国では、その使用は禁止されるか、厳しく規制されている。パームオイル・プランテーションで大量のパラコートを使うマレーシアも、4年前に禁止した。しかし、除草剤耐性雑草の発生を防ぐためにグリホサートとパラコートなどの併用を勧めるシンジェンタ社(ブラジルの大豆畑で除草剤・グリホサート耐性雑草確認,06.10.12)の猛烈な巻き返しで、マレーシア政府はこの禁止を近々解除するという(MALAYSIA : Return of Paraquat - Activists Aghast,IPS,10.18)。

 こうした農薬の排除のためにも、フランスの研究結果の発表が待たれる。

 関連情報
 乳癌のリスク 農場で働いたことのある女性で高い 農薬が関連かーカナダの新研究,06.10.12