カナダＮＰＯ　日常生活環境中の化学物質と発癌の関連性研究基金を立ち上げ

カナダＮＰＯ　日常生活環境中の化学物質と発癌の関連性研究基金を立ち上げ

06.10.24

　癌研究資金提供で中心的役割を演じてきたカナダのＮＰＯ・”癌研究協会”（Cancer Research Society、CRS）が10月23日、我々の日常的環境の中の発癌物質への暴露と発癌の関連性を確立するための先駆的研究を支援する新たな”環境-癌基金”（Environment-Cancer Fund、ECF）を立ち上げたと発表した。

　先日、農場で働いたことのある女性は乳癌になるリスクが高いというカナダの研究について伝えたが（乳癌のリスク　農場で働いたことのある女性で高い　農薬が関連かーカナダの新研究,06.10.12）、このようなに癌と環境との間に高い関連性が存在するのではないかと示唆するいくつかの研究はある。しかし、この分野の研究は、比較的軽視されてきた。カナダの癌研究支援のために過去10年で5000万ドルを贈与してきたというＣＲＦは、このような癌研究の欠落部分を埋めるためにＥＣＦを立ち上げたという。

　Challenging the Cancer Threat from Everyday Environments:Canada's first major fund for research into the links between the environment and cancer announced today in Toronto,06.10.23
http://src-crs.ca/main.php?archives=0&main=&newsid=0&id=390&lang=2

　これについて伝えるグローブ・アンド・メイル紙によると、カナダでは、癌治療法・有効な薬剤治療・癌の遺伝的原因の発見のために大量の資金が注ぎ込まれているが、あり得る環境あるいは汚染との関連を調査するための資金はほんの僅かな部分を占めるにすぎない。

　CRSは、この欠陥を埋めるために、投棄廃棄物から浸出する汚染物質、消費者製品中の有害化学物質、多くの家庭で発見される放射性ラドンガスなどの要因の調査に資金を供給する。また、優先研究分野を絞り込むために、傑出した環境保護活動家を手配したという。

　CRSのマリオ・シェブレット会長は、喫煙や太陽光の紫外線が癌を引き起こすことはよく知られているが、他の要因についてはそれほど知られていない、一部の癌を説明できる個人のゲノムと我々がその中で生活している化学物質の混合物の間の関連」は十分にあり得ると言う。

　ともあれ、カナダの癌発生率は最近数十年の間に急増した。専門家は早期発見が進んだためと用心深いが、乳癌、睾丸癌、前立腺癌、甲状腺癌が新たなタイプの環境汚染物質への暴露に関連している可能性はある。

　環境活動家や一部の医学研究者は、排煙、農薬、プラスチック、消費者製品に使用される多くの化学物質が現在のすべての癌統計に”指紋を残している”と確信している。

　しかし、癌専門機関は環境をめぐる懸念を軽視、喫煙、陽光への暴露、運動不足、果物や野菜の摂取不足などの生活スタイル要因が癌発生の増加で役割を演じていると強調してきた。例えば、カナダ癌協会（ＣＣＦ）も、生活スタイルの変更、とりわけ禁煙だけでもすべての癌の少なくとも半分は防止できると言っている。それでも、ＣＣＦも環境との関連の一層の研究に関心を持ち、癌予防の手がかりを探るために、今年は生活スタイル要因とともに、発癌物質への職業的・環境的暴露の研究に100万ドルを提供した。

　先のシェブレット博士は、人々が何を食べるかも含めた環境要因、我々が呼吸する大気中の汚染物資、生活スタイル要因は大部分の癌に責任がある、もし汚染物質が一部の癌を引き起こしており、研究者がその物質を特定すれば、そのような化学物質を禁止するか、制限する立法を通過させることが重要になると言う。

　実際、汚染物質が一定の癌の主因であることを示唆するいくつかの研究があり、最近、農場で働いたことのある女性では乳癌のリスクが高いことを示す研究も現れた。しかし、この研究を率いた職業病専門の研究者は、癌研究に資金を供給する機関は、農薬や化学物質への故意でない暴露が発癌に役割を演じているかどうかを探ることには滅多に関心を示さないと言う。

　癌撲滅の一部唱道者も、あり得る環境要因の一層の研究を望んでいる。カナダ結腸直腸癌協会のバリィ・ステイン会長は、職業や人がどこに住むかといったあり得るリスク要因をあげ、結腸直腸癌への環境影響を非常に心配しているという。

　Cancer fund to explore environmental links to illness,Globe and Mail,10.23
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20061023.wxcancergta23/BNStory/specialScienceandHealth/home