農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質ニュース:2014年8月9日

米国中西部河川に広がるネオニコチノイド系農薬汚染 水棲生物に有害なレベルを超える濃度 

  米国地質調査所(USGS)の初めての大規模調査で、米国中西部諸州のほとんどあらゆる河川・流れが、世界中でミツバチを激減させていると疑われるネオニコチノイド系殺虫剤で汚染されてることが明らになった。最大汚染濃度は水棲生物に有害とされるレベルを大きく超えているという。

 この種の農薬の使用は近年、米国でも、特にトウモロコシ生産地帯をなす中西部で急増してきた。アイオワ州のトウモロコシ生産だけでも、その使用は2011年-13年にほとんど倍増した。これら農薬は水に容易に溶けるが、環境中ではなかなか分解しない。したがって、これが使われた畑から容易に河川や地下水に流れ込み、溜まる。

 ミシシッピやミズーリを含む九つの河川や流れを調査したが、すべてでこの化学物質が見つかった。一番よく見つかるのがクロチアニジンで、75%のサイトで見つかり、濃度も最高だった。チアメトキサムは47%、イミダクロプリドは23%のサイトで見つかった。アセタミプリド、ジノテフランは1回見つかっただけ、チアクロプリドはまったく見つからなかった。農薬は栽培シーズンに入って最初に施用(多くは作物そのものへの散布ではなく、種子のコーィングの形で使われる)される前から見つかることから、前年に施用されたものも残るらしい。

 水棲生物が長期にわたりイミダクロプリドに曝されると1リットル当たり10―100ナノグラムの濃度でも有害であることが分っている。クロチアニジン、チアメトキサムも同様な毒性が想定される。この研究におけるクロチアニジン、チアメトキサム、イミダクロプリドの最大濃度は、それぞれ1リットル当たり257、185、42.7ナノグラムだったという。

 Michelle L. Hladik et al,Widespread occurrence of neonicotinoid insecticides in streams in a high corn and soybean producing region, USA,Environmental Pollution, Volume 193,October 2014, Pages 189196

 参照:Insecticides Similar to Nicotine Widespread in Midwest,USGS Newsroom,14.7.24

   こういう汚染の意味するところは? ミツバチの減少だけではない。オランダの研究によると、表流水のイミダクロプリドの濃度が髙い地域ほど小鳥の減少が激しく、1リットル当たり20ナノグラムの濃度の水汚染は年平均3.5%の小鳥の減少につながるそうである(ネオニコチノイド系殺虫剤が小鳥の減少と強く関連 オランダの新研究が実証,14.7.10)。まさしく、「沈黙の春」(レイチェル・カーソン、1962年)である。