農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質ニュース:2015年11月14日

グリホサートに発癌性はなさそう EUのリスク評価 急性参照用量も初めて設定

 EUの食品安全機関(EFSA)が12日、EFSAとEU27ヵ国は広く使われている除草剤・グリホサートのリスク再評価を完了したと発表した。EFSAとEU諸国は、グリホサートは人に対する発癌性を呈することははありそうにないと最終的に結論するとともに、食品中のグリホサート残留に関するコントロールを強する新たな安全措置を提案したという。

 Glyphosate: EFSA updates toxicological profile,EFSA,15.11.1
 http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/151112

 人に対する発癌性については、WHO(世界保健機関)の国際癌研究機関(IARC)は今年3月、グリホサートを「人に対しておそらく発癌性がある物質(グループA)」に分類している(WHO専門機関 除草剤・グリホサートは”人に恐らく発癌性がある”物質に分類,15.3.21)。しかし、EFSAの科学者とEU諸国のリスク評価機関の代表者から成るEUのピアレビューグループは、グリホサートがDNA損傷する(遺伝毒性を持つ)ことはなさそうだ、あるいは人に発癌の脅威を呈することはなさそうだと結論した。特に1国を除くすべてのEU諸国が、人間に関する疫学的的データも、動物研究からの証拠も、グリホサートへの暴露と人の発癌の間の因果関係を証明していないと合意した。

 EFSAは欧州委員会の要請により、グリホサートを多分発癌性ありと分類したIARCの報告も熟慮した。評価はIARCによりアセスされなかった多くの研究を含む大量の証拠を考慮した。それが異なる結論に至った理由の一つという。

 グループはこれに加え、グリホサートの急性参照用量(ARfD、急性健康影響が生じない短期間=一日または一食での摂取量)を体重1キログラム当たり0.5ミリグラムと設定、作業者(農業者)暴露許容量(AOEL)を一日体重1キログラム当たり0.1ミリグラム、消費者の一日当たり摂取許容量(ADI)をARfDに合わせて体重1キログラム当たり0.5ミリグラムとするという安全措置も提案した。