農業情報研究所環境農薬・化学物質・有害物質ニュース:2015年6月14日

カナダ・オンタリオ州 ネオニコチノイド殺虫剤処理トウモロコシ・大豆作付面積80%削減を目指し新規制 

 カナダ・オンタリオ州が新たなネオニコチノイド殺虫剤使用規制を導入する。ネオニコチノイド殺虫剤の蜜蜂その他の有益昆虫に対する高度の毒性は科学的に立証されている。それは土壌中で分解されることなく 長期にわたって残留、水に溶けやすいために容易に水系に入り、水棲昆虫に危害を与える恐れがある。さらに、それを餌とする有益動物にも危害を与える恐れがある。しかるに、オンタリオではネオニコチノイドで被覆された種子の使用が広がっており、州で販売されるトウモロコシ種子のほぼ100%、大豆種子の60%がネオニコチノイドで処理されている。そして過去8年、オンタリオの養蜂業者は冬季に異常に大量の蜜蜂を失っており、201314年の冬季には蜜蜂群の58%が消えた。

 かくて、蜜蜂やその他の有益動物を保護するために、ネオニコチノイド―イミダクロプリド、チアメドキサム、クロチアニジン―で処理されたトウモロコシと大豆の作付面積を2017年までに80%減らす。ネオニコチノイド処理種子は受忍限度を超える害虫被害の可能性が立証されるときにしか使用できないようにする。これら二つの作物におけるネオニコチノイド殺虫剤使用を減らすことで、授粉動物の神経毒性殺虫剤への暴露の機会が大きく減るという。  

 News Release Ontario Introducing New Rules to Protect PollinatorsMinistry of the Environment and Climate Change 15.6.9)

  新たな規制システムの詳細は次の通りである。

 1.農民は授粉動物保護のための総合的害虫防除方法の訓練を受けねばならない。ネオニコチノイド処理種子を購入する者は誰でも、総合害虫防除訓練を終えたと認証されねばならず、この訓練コースには生態系にとっての授粉動物の重要性やそれらの殺虫剤への暴露の防止方法に関す訓練が含まれる。また、各人は害虫を同定し・偵察する方法についても訓練を受ける。

 2.ネオニコチノイド処理種子を使用する農民はネオニコチノイド処理種子の使用が必要な害虫問題があるかどうかを評価(アセス)しなければならないが、2016年については、ネオニコチノイド殺虫剤の使用の削減を促進するための措置として、ネオニコチノイド処理種子の作付面積を総作付面積の50%以下に抑える農民にはこの評価を免除する。ネオニコチノイド処理種子の作付面積が総作付面積の50%を超える場合にはこの評価報告を作成、種子購入先の販売代理業者や種子供給会社に提出しなければならない。

 2016年8月31日に始まりる2017年作季については、ネオニコチノイド処理種子の購入または使用を望む農民は、①総合防除訓練完了証書、②総合防除の原則尊重の申告書、③害虫被害が限度を超えることを示す害虫評価報告を、販売代理業者や種子供給会社に提出しなければならない。 

 3.ネオニコチノイド処理種子を販売するためには、種子会社―ネオニコチノイド処理種子の販売会社―はライセンスを必要とする。また、これら会社には、種子がネオニコチノイド処理種子であること、非処理種子も利用できることを購入者に知らせる、ネオニコチノイド処理種子と非処理種子の販売を環境・気候変動省に報告する等々の義務も課せられる。

 4.開放的で透明なシステムの確保のために、販売と種子処理のデータは毎年、環境・気候変動省に提出され、害虫評価報告は農業・食料・農村省に提出される。

 Backgrounder Regulating NeonicotinoidsMinistry of the Environment and Climate Change 15.6.9)

 

  なお、ネオニコチノイド殺虫剤の蜜蜂やその他の有益動物に対する有害性に関する海外の主な研究には次のようなものがある。

 ネオニコチノイド系殺虫剤が小鳥の減少と強く関連 オランダの新研究が実証,14.7.10

 ネオニコチネイド系殺虫剤がミツバチを減少させる 二つの新研究が立証,12.4.6

 日本でも蜜蜂やその他の生物に対する有害性を示す研究は増えている。

 ネオニコチ系農薬 赤トンボが絶滅の恐れ 米価下落で絶滅危機の水田を守るためにも全面禁止を,14.10.3

 トキ繁殖に影響か ミツバチ大量死?ネオニコ系農薬 東京新聞 14.1.20

 ミツバチの群れ 農薬で消滅 ネオニコチノイド系 金沢大確認 東京新聞 13.6.18

 それでも、「農薬大国ニッポン」は、そんなことは知らぬ存ぜぬとほっかむり、お役人はとっくの昔にネオニコの神経毒性に当たって方向感覚をなくしているのかもしれない。方向感覚と言えば、現総理大臣をはじめとする日本国の大部分の政治家も方向感覚をなくしているようにみえる。日本国国民の多くは、何とか方向感覚を取り戻しつつあるようだが(内閣支持45.8%に低下=安保法案、成立反対8割超-時事世論調査 時事ドットコム 15.6.12)。そういうお前は大丈夫か?って。さあ!?

 農薬大国ニッポンの逆相 「ネオニコ」拡大路線 東京新聞 13.11.25

 ネオニコチノイド系農薬「生物多様性脅かす」 生物学者「規制を政策決定すべき」(首都圏) 東京新聞 14.8.12

 斑点米カメムシをめぐって農水省2局長との話し合い―着色粒規程は必要、斑点米カメムシは大害虫と要望拒否 てんとう虫情報(反農薬東京グループ) 14.10.25

 明らかになりつつある農薬の人体実験―有機リンやネオニコチノイドの検出実態 てんとう虫情報(反農薬東京グループ) 14.10.25

 QAを修正したものの―農薬によるミツバチ被害についての農水省からの回答 てんとう虫情報(反農薬東京グループ) 14.10.25