カナダ政府と自動車産業、温暖化ガス削減自主協定に調印

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.7

 カナダ自然資源省とカナダの主要自動車メーカーの大部分が加入するメーカー団体が5日、新車・トラックからの温室効果ガス年間排出量を2010年までに530万トン削減する自主的協定に調印した(Natural Resources Canada,Automobile Industry and Government Agree on Climate Change Action:http://www.nrcan-rncan.gc.ca/media/newsreleases/2005/200522_e.htm)。この削減量は、カナダのすべての車から排出される温室効果ガスの6%に相当する。協定は、消費者に燃料節約の選択肢を与え、温室効果ガス削減を実現するための即時の行動に焦点を当て、政府・産業・消費者に費用効率的解決策を提供するものという。

 このために、カナダ自動車産業は多様な燃料節約技術を提供・促進する。また、安全性を犠牲にすることのないデザインとエンジニアリングの改良を続ける一方、一層燃費節約的なドライビング行為を促がす技術を提供する。さらに、カナダ人にどうしたら温室効果ガスを減らすことができるのかを理解させ、車の購入・維持・運転に関する消費者とドライバーの積極的行動を支援し、政府・燃料供給者と共同して代替燃料を含む適切な燃料が利用できるように保証する。

 この協定は、カリフォルニア州の同様な提案がメーカーの訴訟に巻き込まれている米国で大きな反響を呼んでいるようだ。

 カリフォルニアは2016年までに30%ほどの削減を求める規則を制定、他の7州にもこれに続く動きがある。自動車産業は、燃費規制の権限は連邦政府にのみある、温室効果ガスに関する基準が国中で違っては機能しないとカリフォルニアの規制に法廷で挑戦している。ところが、 ワシントン・ポスト紙によると、米国自動車メーカーは、カナダの計画はカリフォルニアの計画よりも米国での削減のためのより良いひな型になると評価してしている(Automakers Agree to Cut Emissions In Canada,The Washington Post,4.6)。カリフォルニアの規制は、専らに二酸化炭素排出削減に焦点を置いており、産業によれば、その目標は燃費改善のためのば抜本的技術改良によってしか達成できない。これがカナダ・モデルを高く評価する理由であろう。

 温室効果ガスの主体は二酸炭素だが、窒素酸化物や数種の炭化水素も温暖化に寄与する。二酸化炭素はエンジンでの石油燃焼の不可避の産物であり、燃費改善によってしか削減できない。しかし、その他の温室効果ガスの排出は他の様々な方法で削減できる。米国自動車産業団体によれば、カナダ政府は当初、温室効果ガス年間排出量を530万トン削減するために33%の燃費改善を望んでいたが、産業が逆提案、コストが高く、技術的にも大きな挑戦となる燃費改善だけではない多様な方法で目標を達成することに合意したのだという。この協定では、目標が達成されなくても罰はない。しかし、政府は、企業が行動を怠れば、強制的規制を課すことができる。

 環境保護団体・シエラクラブの地球温暖化プログラムの代表者は、この協定は、「カナダの車のクリーン・アップでけでなく、米国における一層クリーンな車に向けての努力を梃入れするから、非常に重要なステップだ」と評価している。確かに、代替燃料車の開発をやめて海のものとも山のものとも分からない次世代自動車の開発に熱を入れることで当面の温暖化防止策をさぼろうとするどこかの政府の立場よりはましかもしれない(水素経済実現にはウェールズを覆い尽くす風車か、1000基の原発が必要,04.10.13)。できることから今すぐ始めねばならない(二酸化炭素削減は既存技術の僅かな変更で―ハイブリッド車普及が有効(米国の新研究),04.10.29)。