米国研究者 大気中二酸化炭素濃度は381ppmに 増加が加速

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.14

 BBC Newsによると、ロッキー山脈を含む世界中から採取した大気のサンプルを分析している米国海洋大気局(NOAA)が、大気中の二酸化炭素が前工業化時代平均を100ppm上回る381ppmに達したことを明らかにした。2005年中の増加は2.6ppmで、記録に残っているかぎりで最高の年間増加量の一つをなす。NOAAの二酸化分析主任は、最新のデータは、年平均増加率が過去30年で倍増した憂慮されるトレンドを確認するものと言う。増加率は減る兆候はなく、加速する一方という。

 Sharp rise in CO2 levels recorded,BBC,3.14
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/4803460.stm

  この分では、国際気候変動パネルの科学者が望ましいとする21世紀末の上限濃度・450ppmには30年足らずで達してしまう。さらに、これは非現実的だからと、人間生活がなんとか適応できるか耐えられる限度として設定する限界濃度・550ppmにさえ、70年足らずで達することになる。年間濃度増上昇率がさらに増える一方とすれば、この期間は縮まることはあっても、延びることはない。今世紀半ばには真の破局が訪れるかもしれない。

 これさえも希望的観測かもしれない。アフリカを襲っている干ばつ、毎年世界各地で起きる大洪水や大規模森林火災、現在既に「耐えられる限度」に迫っているのではないか。2003年に猛暑と厳しい干ばつに襲われたヨーロッパには、今年も既にそれに匹敵する干ばつの兆候が現れている。大規模な農作物被害が予想されるだけではない。河川の水不足は水力発電の能力を奪い、冷却水の多くを河川に依存するフランスでは原発も停止、ヨーロッパ規模の電力不足も起きるだろうと恐れられている。砂漠化が進むスペイン南部やポルトガルが飲み水にも事欠き、森林火災で大量の住民が住処を追われる恐れがある。

 Dry winter points way to ssummer droght for Europe,Financial Times,2.27,p.3

 ヨーロッパも「限界」に近づいているのではないか。最近は、局地の氷の溶解が急速に加速しているという確実な証拠も見つかっている。それに伴う海面の急上昇は世界中の多くの島嶼や沿岸地域を水没させ、水没しないまでも大洪水の危険が増す。逆の確証はないかもしれないが、これらが温室効果ガスの濃度上昇に起因する温暖化と無関係とは誰も証明できていない。地球全体にそう遠くはない「限界」に近づいているのではないだろうか。

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